from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

民主党の郵政改革案

JMM『「選択のマトリックス」from 911/USA』(冷泉彰彦)から。

構造改革路線以外にも重要な争点があります。そうした他の争点とのマトリックスの問題を考えてみましょう。例えば、外交問題です。小泉外交とはブッシュ政権の軍事外交政策への徹底した追随と、歴史問題を中心としたアジア諸国との関係冷却化を放置するという明確な方針がありました。仮にこの問題を「米国追従」か「国際協調」かという選択肢にまとめたとして、これは現在の小選挙区比例代表並立制の中では、どのように問われるのでしょうか。
構造改革と外交ではマトリックスは2かける2で4通りになります。(1)小さな政府=対米追随、(2)小さな政府=国際協調、(3)大きな政府=対米追随、(4)大きな政府=国際協調、の4つです。小泉自民党は勿論(1)ですし、自民党内の造反派は(3)ということになるのでしょう。そして、民主党の主流としては(2)のようです。
ところが、まず民主党小泉政権への対抗をする必要から、元来が(2)の位置から(4)に変わってしまっています。岡田代表は「郵政は主要な争点ではない」と言っており、その真意は「元来は(2)だが、支持基盤の組合の問題と、政権への対抗から仮に(4)になっている、その不自然さを自民党に突かれないようにしたい」ということなのでしょう。

という訳で、民主党は郵政改革案を出してきた。
朝日新聞

民主党の郵政改革案は、郵貯資金特殊法人の無駄遣いにつながっていることを指摘。民間資金を公的部門に流す役割を必要最小限に抑えることを目的とする。そのため、郵貯の預け入れ限度額をただちに700万円に引き下げた後、段階的に500万円まで引き下げることを明記する。
また、「郵便事業への(民間企業の)参入要件や経営に対する過剰な行政の関与を排除する」ことにも触れる。将来の経営形態については今年3月にまとめた党の改革案は「あらゆる選択肢を否定するものではない」としているが、マニフェストでの表現は調整中だ。
民主党は当初、「郵政問題は自民党内の争い。相手の土俵に乗ることはない」(幹部)と、具体的な郵政改革案を明示することは避ける方針だった。岡田氏は郵貯と簡易保険の民営化論者だが、党内に郵政関係労組の支援を受ける議員がいることから、民営化策を打ち出せない背景もあった。
しかし、小泉首相は選挙戦に向けて郵政法案に反対した自民党の「造反組」と民主党を同列に扱った批判をしている。このため、「ここで郵政への姿勢を示さないと、有権者から逃げていると思われる」(執行部)との意見が強まり、年金や外交などとともに重点項目とすることを決めた。
岡田代表は13日午前、大阪市内での街頭演説で「十数年かけて(郵政事業を)民営化しようというのが小泉さんのプラン。(民主党案なら約230兆円の)郵貯の規模を100兆円ぐらいは縮小できる。限度額の上限を700万、500万と引き下げていく。膨張した郵貯の規模を、もとに戻すのが私たちの政策だ」と訴えた。

公社のままで、郵貯額を減らして、財投機関債の発行額を抑えようということ?
金融用語辞典」によると、

業績悪化などから財投機関債を発行できない状況にある特殊法人には、政府保証債の発行を認め、さらに、財投機関債・政府保証債においても資金調達が困難な場合には、政府が財投債を発行して調達した資金を融資する措置が採られます。

財投機関債の発行側である特殊法人の縮小化もマニフェストにあるのかな。「民主党政権になれば、郵政公社国債を引き受けさせることはやめさせる」とも言っているようだけど、郵政公社は何処に融資するのかな。
全国に約1万9千カ所あると言われる特定郵便局の問題はどうするのかな。
集英社新書WEBコラム-「特定郵便局」(辛坊治郎)から。

特定郵便局について一般的に言える”特徴はいくつかある。
 まず、
 1)郵便局の土地、建物は、郵便局長の所有物であり、国が、局長に家賃を払っている。自宅=郵便局の場合でも、この家賃は支払われる。
 2)局長には給料は勿論、公務員としての待遇が保証される。
 3)公務員としての定年はあるが、妻、子に世襲制的にその地位が受け継がれる。
 4)給料とは別に、年数百万円の経費(渡切経費・わたしきりけいひ)が支給される。
 5)局の営業成績が悪いと、局長会などで肩身が狭い思いをするが、公務員なので収入が減ることはない
 などなど。
 と、特徴を挙げると、「ええ待遇やん。俺も特定郵便局長になる。」と思う人は少なくないだろう。ところが、未だかつて、局長を公募したという話を聞いたことが無ければ、そのための国家試験があるというのも聞いたことが無い。何故か?それは、上記の 3)に秘密がある。特定郵便局長になるには、厳密には、任用試験をパスしなくてはならないのだが、その試験情報が一般に知らされることはまずない。一部の関係者だけ、つまり、慣習的に有資格者と思われる人物(特定郵便局長の後継者、郵政省OB)のみが実質的に知りうる知るシステムが出来上がっているのだ。大変な利権である。その利権の監督官庁が、旧郵政省(現総務省)であり、ここで力を発揮するのが、自民党郵政族と呼ばれる国会議員群である。