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子育ての日々の断片を書き綴る

官僚の言いなり行政

NHKニュース「イレッサ裁判 和解勧告応じず」。

菅総理大臣は記者団に対し、重い副作用が相次いだ肺がんの治療薬「イレッサ」を巡る裁判について、「和解となると1つの結論が出ることになり、もう少し時間をかけたい」と述べ、裁判所の和解勧告に国として応じないことを明らかにしました。
この裁判は、肺がんの治療薬「イレッサ」の投与を受け、重い肺炎を起こして死亡した患者の遺族ら15人が、国と製薬会社におよそ1億8000万円の賠償を求めているもので、裁判所は、今月7日に和解を勧告し、原告側は受け入れることを決めています。これについて、菅総理大臣は、28日、記者団に対し「副作用がある一方で、多少の副作用を覚悟しても新しいがんの治療薬を使いたいという人がおり、この2つをどう判断するか考えさせられることが多かった。和解となると1つの結論が出ることになり、いろいろなことが不十分なので、もう少し時間をかけたい」と述べ、国として和解勧告に応じない方針を明らかにしました。そのうえで、菅総理大臣は「がんのような重篤な病気でも、副作用の救済が得られるような制度を検討する必要があり、少し時間をかけて前向きに検討したい」と述べ、抗がん剤による副作用で死亡した患者の遺族らに対する救済制度は必要だという意見も踏まえ、今後、具体的な対応を検討していくことになりました。これにより、裁判では和解協議は行われず、判決が言い渡されることになりました。イレッサは、9年前に日本で世界に先駆けて承認され、毎年およそ9000人の新たな肺がん患者に使用されていますが、患者が死亡するケースが相次いで報告され、これまでに800人以上が死亡しています。

法学館憲法研究所「薬害イレッサ訴訟」。

イレッサ臨床試験において、データの改ざん・無視がなされていました。まず、臨床試験に当たっていた医者が、副作用と見られる間質性肺炎を確認し、その症状について、死亡の恐れがあることを示す「グレード4」で報告したにもかかわらず、会社は、承認審査のための報告書に、生命の危険のない「グレード3」と記載していました。また、動物実験でも、肺障害の悪化が確認されたにもかかわらず、その学会報告を中止し、厚生労働省への報告も承認後までしていませんでした。この他にも、いくつものデータの改ざん・無視があったそうです。
国の審査もずさんなものでした。たとえば、被告アストラゼネカ社は、海外で行われた臨床試験において、イレッサを投与された患者約1万9千人のうち、重篤な副作用が疑われた患者として196人を厚生労働省に報告しました。このうち死者は55人で、この中には間質性肺炎や急性肺障害の疑いのある死者12人も含まれていました。しかし承認審査を担当した厚生労働省の医薬品医療機器審査センタ−は、海外からの副作用報告について、アストラゼネカ社にそのデータを求めておらず、副作用かどうかの判断を事実上棚上げし、審査報告書にも盛り込みませんでした。
また国内での臨床試験でも、イレッサを投与された286人のうち、副作用の肺障害で1名が死亡、3名が重症とされ、2002年5月22日に、その報告が厚生労働省に対してなされましたが、厚生労働省は、承認を行う審議会に対してこの事実を報告しませんでした。そして厚生労働大臣は、イレッサを新薬として承認したのです。

JMM「医療事故に無過失補償を」(ナビタスクリニック立川院長 久住英二)

肺がんの治療薬であるイレッサを巡る医療訴訟で、和解勧告が出されました。新規の薬剤、治療法では、市販後初期に予期しない、もしくは想定以上に有害事象が生じることがあります。その場合、まず優先されるべきは、被害者のすみやかな救済です。そのためには、無過失補償制度の導入が必要です。
医師の診断や、手術などの手技によって健康被害が生じた場合、補償する制度がなく、そのままでは救済されないため、訴訟せざるを得ません。しかし、訴訟しても医師の過失が認定されなければ、賠償も補償も受けられず、救済されません。医師賠償責任保険という民間保険があり、ほとんどの医師が加入しているのですが、この保険は過失が認定された時しか支払われません。そのため、医療者がその保険をつかって救済してあげたくとも、できません。