from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

百度と谷歌

JMM『「グーグル、百度と谷歌のこと」:現地メディアに見る中国社会』から。

グーグル、百度と谷歌のこと
霍炬
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この5年間、マスコミがいつも話題にしてきた「谷歌の困難」とは「本社からの圧力」だったのだ。わずかにぼくが挙げた部分だけでもすでにグーグルの価値観に抵触しているのだから、グーグル(本社)が不満に思わないわけがない。
興味があれば、2005年から2010年の5年間、グーグルが何をしたのか、谷歌が何をしたのかを比べてみるといい。そこには全く違うプロジェクトが並んでいる。結果からすればそれはどれも「市場シェアの拡大、収入の増大」と言えるのだろうが、グーグルはここ数年間、検索インフラを固めて来た。検索のコンテンツソースとその
規模を拡大し、検索を非デジタルなコンテンツにまで引用し、地図や衛星画像、アースやストリートビューなど一連の重要なサービスを発表し、モバイルや3Gに進出した。谷歌はなにをした? 音楽、人気ランク、そしてどっかからコピーしてきたインプット方法だけじゃないか。
谷歌が生まれたその日、ぼくは一本の原稿を書いた。それは「中国を研究開発基地と見なして投資、研究開発を行うだけで営業は行わないか、あるいはインドで支社を開くべきだ」という内容だった。それが今、見事に的中したわけだ。
4.孫雲豊氏の視点について
商業価値と経済利益という面から考えても、グーグルの「邪悪なことはするな」というのはただの「カッコつけスローガン」ではないことが分かる。情報の秩序化でもうけようとする企業にとって、邪悪なことをしないことは「マスト」である。百度はその逆なので、邪悪なことをしなければならないのだ。
グーグルは幸せだ。商業価値を正確な価値観の上に築くことができるのだから。それは非常に貴重なことだといえる。残念なことに、百度にはそれはできない。
孫雲豊氏(百度のトッププロジェクトデザイナー。グーグルの中国撤退示唆後、「胸クソ悪くなる」というタイトルでグーグルを批判する内容のブログエントリを発表したが、その後それを削除した)の発言は支離滅裂だ。彼は一方で「グーグルは人権戦士などではなく、利潤を求めるケチな野郎」と言いながら、社会的公正さという旗を振り回して百度の道徳感を持ちあげた。この二つは明らかに矛盾している。もしグーグルの目的が利潤だけだというのなら、百度も同様なんだから道徳なんて振り回すべきじゃないだろう。

BPnet「高まる検索エンジン・ナショナリズム(後編)--なぜGoogleは「百度」に負けたのか?」から。

「インターネットの検閲はもちろん悪いことです。中国人はみんなそう思っているでしょう。でも日頃の生活で,検閲が自分自身にとって何かマイナスになるかというと,実はそれほどでもない。(例えば中国政府がどうしても隠したい政治問題などを)知っていれば,それは良いことだが,知らなくても自分が被害を受けることはない。(中国人の検閲に対する考え方には)そういう面があると思います」
これは率直な感想だと思う。と言うのは,恐らく総人口の10%に当たるインターネット・ユーザーは,中国でも中流以上の人達と思われる。また農村部よりも都市部の住民が多いであろう。要するに市場経済に移行した現代中国で,比較的うまくやっている人達である。
こうした人々は恐らく,体制への不満がそれほどない。なぜなら自分達を快適な生活に導いてくれたのが,現体制であるからだ。もちろん彼らだって,農村部で不当な土地の収奪が横行し,地方役人が横暴を極め,貧しい労働者への給料が遅配し,内陸部を中心に経済的弱者の不満が高まっていることは承知しているだろう。しかし,それが中国全土を巻き込む暴動のような一触即発の事態にまで発展しない限り,都市部で比較的豊かな生活を送る人々にとっては,どこか他所の世界の出来事にしか過ぎないのではなかろうか。
確かに中には前述の反体制ブロガーのような人達もいるだろうが,彼らは恐らく少数派だ。大多数のインターネット・ユーザーは政府の検閲に目くじらを立てるより,MP3検索で流行の音楽をダウンロードすることに気をとられているのではなかろうか。

BPnet「グーグル撤退警告で米中は?」から。

ロサンゼルス タイムズの元北京支局長ジェームズ・マン氏の著書『The China Fantasy(中国という幻想)』(2007年)を引用し、発想の転換を促している。「米国も世界も、中国で30年後も共産党による一党独裁が続いていると考えたことはないだろう。中国がやがて民主化するはずだと思い込んでいるからだ。(中略)だが、中国が良い方向に向かうというのは想像以上に時間がかかるかもしれない」。
つまり、中国については異なる制度や成り立ちなど相違点を理解するよう努力すべきで、そうして初めて中国とのつき合い方が見えてくるというのだ。もっとも、「中国とはもはやあらゆる意味で利害関係が複雑に絡み合うだけに、グーグルのような判断を大きなスケールで行うことは賢明ではない」として、「先進国は中国との関係で今後、頭にくる事態が発生しても我慢するしかなく、それに慣れることだ」と締めくくっている。