from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

預言者ムハンマドの風刺漫画(4)

JMM「デンマーク大使館焼き討ち事件」レバノン〜揺れるモザイク社会』

預言者ムハンマドの風刺画に対する抗議行動はイスラム世界を席巻しているが、とうとうシリアとレバノンにも波及した。4日にダマスカス、その翌日5日にはベイルートで、相次いでデンマーク大使館が暴徒と化した群集に襲われ放火される事件が起きた。
しかしこの二つの事件はどうも胡散臭い。単なる宗教感情の暴発では説明できないところが多過ぎるのだ。元来、シリア、レバノン両国ではパレスチナ、ヨルダン、エジプトなどの周辺諸国と比較して、スンニ派原理主義勢力が相対的に弱い。シリアに至っては、1982年にハマ市の虐殺でムスリム同胞団をほぼ根絶した筈だし、そもそも集会の自由もない警察国家だ。そんな国で大規模なデモが組織され、しかもそれが当局の制御を離れて暴徒化するようなことが起きるものであろうか? 当局は本当に焼き討ちを防げなかったのか?
一方のベイルートでも、昨年には数十万人規模の超巨大デモが幾たびも行われたが、一度たりとも暴動には発展しなかった。それがなぜ今回だけ手に負えないような事態に陥ったか?なぜ広いイスラム世界で、よりによってこの両国だけで大使館が焼き討ちされるところまでエスカレートしたのか? 不審な点を数えるときりがない。
米国のライス国務長官は「群集を煽動している」とシリア政府を厳しく非難しているが、煽動はともかく、防ごうと思えば防げたのにそうしなかったのは事実だろう。
「アサド政権を倒してしまうと、過激な原理主義者が政権を握る」国際圧力にさらされるアサド政権としては、デンマーク大使館焼き討ち事件は、そう政権の存在意義をアピールする格好の材料だったのではなかろうか。