from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

小泉恐慌

立花隆:海外メディアが伝えた小泉・郵政解散劇の評判」から。

日本の戦後の経済的成功を支えた国家体制=国家資本主義体制(1940年体制)の根幹部分は、世界最大の銀行たる郵貯などがかき集めた郵政マネーを国家が中心となって公共事業に投資して回転させていくという行為それ自体によって日本経済の根幹を支えていくという国家中心の資本主義体制にあったわけだ。
日本の経済力をつぶそうと思ったら、この根幹部分をつぶすほかないと見抜いたアメリカのプレッシャーと願望と、たまたま郵政省と郵政族に深い恨みを持った、ちょっと頭の弱いポピュリスト政治家(小泉首相のこと)の望みが一致してはじまったのが、小泉改革の4年間とその頂点としての郵政民営化大騒動だったということではないのか。
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破壊のあとに何をするのかという最も大切なビジョンとして小泉首相がとなえつづけていることは、「民間にできることは民間に」というスローガン以外、何も聞こえてこない。
しかし、民間にまかせておいたら破綻することが必然のことは山のようにある。どうしても官がやらねばならないことも山のようにある。民間にまかせることで合理化がはかられることもあるが、民間にまかせることで、あらわれてくるもっと巨大な腐敗、もっと巨大な不正もヤマのようにある。
実は公的資本を投じることによって経済の相当部分は回転しており、その投資が一定水準以下におちこむと経済は有効需要の不足からデフレ現象がひきおこされ、ついには恐慌にいたるというのは、経済の常識である。ここ数年つづいているデフレの背景にはそれが基本的にある。つまり、これは小恐慌なのである。おそらくあと何年か経つと、小泉時代の目を覆わしめる不景気は、「平成恐慌」ないし「小泉恐慌」という名で呼ばれることになるだろう。

水谷研治「無力な景気振興策」から。

景気が再び悪化すると、景気対策として政府は財政赤字を上乗せした。そのようなことを繰り返したために、我が国の財政赤字は想像を絶するほどの金額となってしまった。
2003年度予算で見ると、赤字は29兆円である。国家の税収42兆円に税外収入4兆円を加えても、地方へ分けなければならない地方交付税17兆円を差し引くと、28兆円しか残らない。これが国の年間の収入である。
ところが金利の支払いが9兆円にのぼり、社会保障費や公共投資などの一般歳が48兆円となっている。
29兆円の巨額な赤字は見通しである。前提となっている経済見通しが予想よりも悪化すれば、赤字額はさらに膨らむであろう。景気を振興しようとすれば、その赤字をさらに上乗せしなければならない。しかし、たとえ上乗せするとしても、それが景気を刺激するほどのことはできないであろう。
したがって、もはや政府の景気刺激策に期待することはできない。
我が国の財政事情は極端に悪く、破綻状態になっているからである。その原因は長年にわたる赤字である。過去28年間、一度も黒字になったことがない。そして最近は赤字が急増しているのである。
赤字分だけ資金が不足するために借金をしなければならない。毎年積み重なった借金の結果、借金の 残高は長期のものだけで530兆円になる。
企業経営では借金の残高はどれほど大きくても年間売上高の半分までに抑えておく必要がある。国の場合、企業の売上高に相当するのは28兆円である。その20倍に近い借金は、もはや正気の沙汰ではない。
それが表面化しない理由がある。金利水準が異常に低いため、金利支払いの負担が隠されているからである。しかし、やがて経済が正常化するにつれて、金利水準も正常へ戻っていく。上昇する。
その時、突如として金利が支払えなくなり、一気に借金地獄へと転落する。そうなると、金利支払いと借金残高の増加が相互に増幅し合って、悪循環になり、悪性のインフレーションへと進んでいく。そこから逃れる方法はない。
そのようなことが起きる時までに問題を解決しておかなければならない。我々が作り上げた借金を返済することである。そのためには、財政支出を大幅に削減することと大増税以外にない。