from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

今回の案には反対

sava95」さんが「第162回国会 郵政民営化に関する特別委員会(6月7日)」における山崎養世(前ゴールドマン・サックス投信株式会社社長)さんの意見陳述を紹介していたので、読んでみた。下記のようなことをおっしゃっている。

財政投融資の問題というのは何か。財務省理財局が貸し手となり、特殊法人等を借り手とする世界最大の国営金融機関、つまり、この日本の公的金融における不良債権問題。担当部署、財政投融資総括課等、定員百八名の理財局による貸付残高は、三百六十兆円。道路四公団の負債は全部で四十兆円。そのうち三十兆円は理財局が貸し付けをしている。本四架橋公団には、四兆五千億ほどの負債がある。利払いが一千百億、料金収入は何と八百億円。これは民間の不良債権基準でいえば、完全なる破綻企業。企業が破綻した場合に、民間の銀行、あるいは信金、信組には、大変な検査、そして、ある場合には逮捕ということもある。例えば、UFJ銀行がダイエーに貸し付けて損が出た、返ってこない、この責任は預金者にあるという議論は全くない。ところが、この財投問題に限って言えば、お金を郵貯が出すから悪いんだ、預金者が悪いという議論にすりかわっている。預金者である郵貯が悪いのであれば、公的年金も民営化すればいい。
金貸しをやる限りはどのような圧力があってもきちっとした回収をする、これは民間銀行に対して厳しい金融行政の中でやってきたことだ。それと同じことが身内の財務省には全くできていないということが今の行政の最大の問題。そして、借り手である特殊法人等々にも、返済の意思すらない、ガバナンスは全くない、税金で埋めてもらえばいい、こういうことがあるから、大変な財政赤字が膨らむ。
官から官への資金の流れ、実は全く変わっていない。財投債というものがあるす。これは国債の一種、何と四十五兆円。三十兆円枠、四十兆円枠と言っていたいわゆる新規財源国債をはるかに上回る金額を今でも理財局は発行し、九割を年金、簡保郵貯に強制的に買わせ、そのお金は同様に特殊法人に流れているから、官から民への資金の流れがある、財投改革があったというのは、真っ赤なうそ。これは、同じように、財投債という名の国債をこれから一般に、さらに市場からも求めてどんどん特殊法人に貸していくという構造に変化はない。
そういった意味で、郵政民営化の国民へのメリットとして言われていること一つ一つを検証していくと、まず一番目、三百五十兆円の郵政資金が官から民にこれから流れるのか、これはあり得ない。国債、財投債でのファイナンスは従前どおり続く。
二番目、郵便局は便利になる、コンビニになり便利になる、果たして本当か。全国津々浦々に、農協すらない地域に二万六千もの郵便局があり、これが日本の近代生活、さらには明治以来の発展を支えてきた、まさに国土の均衡ある発展の重要な担い手はこの郵便局であったというのは、これは言うまでもない。
既に、前島密等々、十九世紀、明治時代に勘考したときに、郵便事業だけでは全国ネットワークをもう維持することはできない、そのときに何を兼業させるのか。トラックか、何なのか。スイスのようにトラックをやるのか。そうではなくて、金融事業をやったことによって、国民にとっては、郵便だけではない、不可欠なお金を預けること、保険に入ることということをやった。それによって日本国は非常に大きな発展をしてきた。果たして、これから郵貯簡保を完全に切り離して100%本当に政府と全く関係のないものにして、郵便事業だけで成り立つのか。もちろん成り立たない。郵貯銀行というものが破綻をすれば、さらに国民負担はふえますから、当然のことながら、縮小、廃止。
民の本質は、もうからないところはやらないこと。もうかるところだけを高い金をチャージするのが民であり、それが一部株主にだけ帰属するのが民というものの本質。国民すべてに同じ機能を提供し、同じ郵便料金を提供するというのが、これが公の役割。
潜在的な国民負担は減るのか。これは幾つかのルートですべてノー。財政投融資特殊法人への財務省理財局による放漫融資が続くということから、そこからの財政赤字が恐らく一番大きな項目になる。そして、新たにできる国営の郵便貯金銀行、民営化と称しながら国が100%保有する国営銀行を新たにつくるというのが、今回の民営化案が今までのNTTあるいはJRと全く違う。試算によると五十兆円の資産を持つメガバンクであって、1%の利ざやで五千億円を稼ぐという。
百年の伝統を持つメガバンクがすべて失敗をしたこの旧来の二十世紀型のメガバンクビジネスモデルを、二十一世紀、これからつくって、うまくいったらどうなるか。地域金融機関はほとんど崩壊し、倒産をする、破綻をする。そこからの財政負担。そして、そこで支えられている地域の中小企業が共倒れをしていく。地域経済は一層疲弊をするということは明らか。当然のように、失敗をしてしまった、破綻をした。そうしたときには、上場益どころではない。この五十兆円が新たな不良債権、財政負担、国民負担を生むということであるから、国民負担は今回の民営化によって増大をしていくということ。メガバンクモデルの問題というのは、大きいところが小さいところを全部食べてしまう、なくなってしまう。そうなるとどうなるか。まさにアメリカの大恐慌がそうだった。民しかなかった経済で銀行が全部つぶれてしまった、そのときにアメリカはどうしたか。公的金融機関を政府部門として一九三八年につくった。
郵政民営化というのは、私も非常に期待をした。郵政民営化、ここから国が変わる。どういうことなんだろうか、こういう取りまとめをせざるを得ないのかな。財務省を中心とした財政投融資を抜本的に改革するどころか、過去の財政金融政策の過ちを郵政に押しつける、これは私はスケープゴートの政策であると言わざるを得ない。そして、問題を起こした財務省あるいはその親戚の金融庁の権限は現実には大幅に強化する。まあ、卑俗な言い方をすれば、マッチポンプ焼け太りができる。失敗して破綻した銀行が預金をしてくれている優良企業を乗っ取るのと同じようなことが今行われようとしているということ、そしてこれが日本の本当の強さを殺してしまう。これから中国とも経済競争していかなきゃいけない、強くならなきゃいけない日本の強みをなくしてしまうのではないか。

内橋克人さんが「東証一部上場企業は実に八十兆円の巨額の現ナマを預金として遊ばせている。しかも十六兆円ずつ毎年増えている。そういう現実とすう勢の中で、郵貯資金を民間に流したからといって、生かせますか」といっていたが、うまくいったとしても、「地域金融機関はほとんど崩壊し、倒産をする、破綻をする」可能性がある訳だ。