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子育ての日々の断片を書き綴る

どういうこと?二十五年に一回しか買い替えない計算

JMM冷泉彰彦:『from 911/USAレポート』年の瀬の疑問」から。

こうした危機には経験のあるはずの、そして金融機関や通貨の体力はアメリカより上であるはずの日本の雰囲気が、真っ暗になっているというのは、私にはどうしても不思議に思えてなりません。特に疑問に思うのは、トヨタをはじめとする日本の自動車産業期間工非正規労働者を解雇し、派遣の労働者の契約を解除する中で大量の失業者を出していることです。「雇用崩壊」という言葉もずいぶん使われているのですが、どうにも釈然としないものがあります。
この現象には三重四重の意味で疑問を感じます。まず思い浮かぶのは、北米市場の特性です。とにかく広大な北米大陸に暮らす人々にとっては、自動車は必需品であり、信用収縮さえ何とかなれば今のような販売の低迷は急速に好転することが考えられます。そして、その際には、将来の保証や保守部品が怪しいアメリカ車ではなく、日本車に需要が殺到する可能性が高いのです。にも関わらず現場要員を一時帰休ではなく、完全に切ってしまうという判断は本当に必要なのでしょうか?
期間工や派遣を切った分は、正社員中心でラインを回すのだというのですが、それではラインのコストは高くなるはずです。急速な円高も進む中、その方がビジネスを回す上で合理的というのも良く分かりません。そもそも、ラインの現場には製造のノウハウがあるはずなのですが、その最新のノウハウを持っている期間工や派遣の人々を放り出して、正社員を充てるというのは何とも非効率なように見えます。正社員の人件費は固定費だから、経営的には当然の判断と受け止められていますが、本当にそうなのでしょうか?
というのは、日本の自動車産業では正社員には、やることは山のようにあるはずだからです。上記のように、GMACなどに資金がふんだんに供給されて信用収縮の改善が進み、クルマの販売が回復する(であろう)というのは数ヶ月から半年のスパンの話であり、その先には「エコカーへの急速な傾斜とエネルギー革命」が待っています。今現在、言われていることを真に受けるならば、年明けの2009年の3月末から4月末にはアメリカの自動車産業はそうしたエコカー実用化を含めた将来的な再建計画を政府に提出しなくてはならないことになっています。アメリカ人は純情ですから、そうした新規事業計画の提出というのは「形式だけ」では絶対に収まりません。出す方も、受け取る方も大まじめ、つまりは急速な変革へと突き進む可能性が濃厚なのです。

東洋経済日本車人気車種も崩落! ゼロ金利でも凍える北米自動車市場」から。

今年の米国市場は1300万台割れも視野に入った。ピークだった05年の1744万台はおろか、07年の1646万台からも300万台以上、減ることになる。日本市場の6割弱が1年間で消えた計算だ。焦点の09年についても「もし1150万台というような事態になればディーラー破綻がさらに増えることになる」(ブライアン・キャロリン北米日産副社長)。
「米国では工場や店頭の在庫も含め、まだ数百万台レベルがダブついているのではないか」。ある日本の自動車メーカー幹部は今からそう悲観している。ならばあと何年、減産すれば帳尻が合うのか。危機の根源である米国市場は視界の見えない、“危険水域”に突入している。

12月24日の日経産業新聞トヨタ不覚、底なし不況、戦後初の営業赤字」から。

二十二日の記者会見で、豊田章男副社長は「米国で保有台数は二億五千万台に上るが、今、販売台数は年率換算で一千万台。二十五年に一回しか買い替えない計算で、あまりに異常」と肩を落とした。国内販売店からは「最近、新車を買う人が『同じ車種、同じ色』を求める」との声が聞こえる。周囲から「あの家、この不景気に新車買った」と思われたくないからだという。

この計算では、二千万台売れても12.5年に1回しか買い替えないことになりますが。新車販売台数よりずっと多い中古車販売台数はどうしたの?
BPnet「2008年11月の米国新車販売台数は74万台、前年同月比36.8%減」から。

2008年11月の米国自動車市場は、新車販売台数が約74万台で、DSR(1日当たり販売台数)は前年同月比約36.8%減、14カ月連続のマイナスとなった。

BPnet「2007年12月の米国新車販売台数は約139万台、年間では約1614万台で2.8%マイナス」から。

2007年12月の北米自動車市場は、新車販売台数が約139万台で、DSR(1日当たり販売台数)が前年同月比約2.9%減となり、3カ月連続でマイナスとなった。2007年1〜12月の合計は約1614万台で、DSRは前年比2.8%減となった。

住商アビーム自動車総合研究所:メールマガジン」から。

米国の中古車市場は、日本に増して巨大であり、年間販売台数は約 44 百万台(日本の中古車新規+移転+名義変更を経た登録台数は年間 8.2 百万台・乗用車のみの小売台数は一説では 3 百万台とも 4 百万台とも言う)。市場規模は 3,660 億ドル(39 兆円)と米国最大の小売セグメントとなっている。
新車販売台数に対して中古車販売台数が何倍か、という新中比率で見ると米国は 2.6 倍(新車販売台数は 17 百万台規模)。

産業企業海外情報 KSK SCANNER 特別編 (2006年10月発行)」から。

Wall Street Journal紙の2月28日号によれば、米国では「自動車の耐用年数・耐用距離が伸び,廃車も減少している」のだという。2004年の新車登録台数が1740万台だったにも関わらず,廃車台数は1190万台で,全登録車の5.4%に過ぎなかった。そして、「この割合は年々低下している」という。高速道路交通安全局(NHTSA)によれば,1977年には自動車の半数が10.5年以内に廃車になり,耐用距離は10万7000マイルであった。それが1990年には12.5年,12万7000マイルに伸びていた。最新の2001年のデータによれば,耐用年数は13年15万2000マイルまで向上している。
これはすなわち、アメリカではなかなか自動車を廃車にせず、中古市場に回したり、新車を購入しても古い自動車をそのまま保有し続けたりする傾向が続いていることを示している。今回のSUV人気凋落の恩恵を最大に受けているのは大衆向けの家族用セダンであると言われているが、その際に、SUVをセダンで乗り換えるのではなく、SUVを保有したままセダンを購入する家庭が増えているという(Wall Street Journal 7月14日号)。

JMM「もし各メーカーがこれまでと同じ雇用を維持したら?」から。

巨額の営業利益を背景に、税引き後の純利益もこの5年毎年1兆円を超し、やはり毎年増加してきました。ちなみに昨年度は1兆7178億円です。税引き後の段階では今年も500億円の黒字を予想しています。これは持分法投資利益2000億円が見込まれるためです。
さて、この利益はほとんど株主に配当されるのかというと、そうではありません。配当額は年々増えてはきましたが、それでも昨年度4308億円に過ぎません。税引き後利益のわずか4分の1です。残りは内部留保に回されます。
ここ数年、ずっとそんな調子だったわけですから、内部留保は巨額なものになっています。財務諸表では「利益剰余金」という項目になっていますが、5年前から順に挙げますと、8兆3262億円、9兆3321億円、10兆4597億円、11兆7647億円、12兆4085億円です。ちなみに直近の数字である今年9月末現在では2500億円以上増え、12兆6658億円です。
誤解がないように繰り返しますが、この内部留保は、事業にまつわる全ての経費を払い、税金等を納め、配当も支払って、なお手元に余裕資金としてトヨタ自動車が蓄えているお金です。ここからまた何かを払わなければならないということは一切ありません。そのお金が12兆6658億円あります。念のために申し上げますが、ここまでの数字は、すべてトヨタ自動車のウエブサイトの「有価証券報告書」に掲載されているもので、秘密情報などではありません。
内部留保額はやはりトヨタがダントツですが、今年9月末現在で、ホンダは5兆3206億円、日産でも2兆8204億円あります。
トヨタは今春9000人いた期間従業員を来年3月末までに3000人に減らすとのことです。6000人が職を失います。彼ら一人当たりの人件費を、派遣会社など中間に入る業者への支払いも加味して、年間500万円と見積もったとして、合計年間300億円です。

時事ドットコム人員削減撤回を申し入れ=共産委員長、トヨタ幹部と会談

共産党志位和夫委員長は24日、党本部でトヨタ自動車の古橋衛専務取締役らと会談し、同社が決めた期間従業員3000人の削減計画について「大量解雇が避けられない合理的理由は考えられない」と述べ、非正規労働者らの雇用を維持し、社会的責任を果たすよう求めた。
志位氏は「トヨタは巨額の内部留保を抱え、配当も行っている」と指摘。同氏によると、トヨタ側は「内部留保を取り崩してまで期間従業員を守ることはできないという経営判断だ」として、計画を撤回する考えがないことを説明した。