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子育ての日々の断片を書き綴る

政治家は“調教”される

nikkeiBPonline「タケダジャーナル 官僚から「本当の話」を聞き出す方法〜ミスター年金・長妻昭氏に聞く取材テクニック【前編】

長妻 理由のまず第1は、「そういう資料がそもそも存在していない。出すとしたら今から調べてまとめないといけない。だから物理的に対応できない」というもの。そもそも官僚は、野党議員とマスコミの質問に答えるのはサービスだ、と思っていますよ。
武田 なるほど。義務や本業ではなくてサービスであると。
長妻 「本業に差し障るので(資料を要求されるのは)困る」と言った官僚がいましたからね。
武田 本業と課外活動という位置づけですね。
長妻 課外活動だからサービスでやっている。親切で出してあげているのに、あんた、そんな無理難題を言うなと(笑)。いや、ま、そこまで面と向かっては言わないけれども、そんなニュアンスですね。
2番目に出てくる理由としては、「資料はあるけれども表に出せない」というやつ。プライバシーの関係や、「企業からもらった資料だけど、その企業は公開を前提として役所に出したんじゃないので」とか。
武田 個人情報保護法守秘義務をそういう時だけ都合よく適用するわけですね。
長妻 とんでもないケースとしては、「その資料が欲しければ、窓口に行って、情報公開請求してください」と、役所に言われたことがある。
武田 正規の手続きを取ってくれと。それじゃ議員である価値がないですね。
長妻 それともう1つ。彼らは政治家を“調教”する、しつけようとするんですよ。
例えば政治家から資料要求されてもすぐに「はい、分かりました」とは出さない。出せる資料も出さない。白書に毛の生えたような資料でも「いやぁ先生、それ本当に必要なんですか」とか、「これをどういうふうに使われるのでしょうか」とネチネチ聞いてくる。
どうでもいい、すぐ出る資料でも出し惜しみして、それで情報要求のハードルを上げようとするんですね。「あなたの望んでいることは大変なことなんだよ」と思い知らせようとする。そうすると議員は…。
武田 自然と要求レベルを下げるようになる。
長妻 そう。「じゃあ、君、これは無理らしいからこちらなら出るかい」「いや、先生、これもちょっと難しいです」と議員にどんどんハードルを下げさせる。政治家にこういう訓練をしてゆくのが官僚の仕事だと思っているフシがある。