from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

『があるような見せかけ

世界2007.3『<やりがい>の搾取 拡大する新たな「働きすぎ」』(本田由紀)から。

彼らを「働きすぎ」にいざなっているのは、自分の裁量で仕事の仕方を決め収益を動かすことができる疑似自営業業者的な就業形態にある。
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自己実現系ワーカホリック」という問題提起に対して、それは自己実現できているのであるから無問題ないし当人とって幸福ではないか、という反論も想定される。しかし、ことはそれほど簡単ではない。彼らは自発的に「自己実現」に邁進しているように見えて、実は彼らをその方向に巧妙にいざなうしくみが、働かせる側によって、仕事の中に組み込まれているのである。
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安定雇用と相対的に高い賃金を手にする正社員と、不安定雇用と低賃金にさらされる非正社員という、二つのグループに大きく分けられる労働者群が生み出されてきた。前者の正社員は、安定雇用と相対的高賃金の代償ととして、あらん限りのエネルギーと能力、そして時間を仕事に注ぎ込むことを求められがちである。
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日本企業は、・・・安定雇用の保障や高賃金という代価なしに、労働者から高水準のエネルギー・能力・時間を動員したいという動機を強く有している。そして、その実現のために、①趣味性、②ゲーム性、③奉仕性、④サークル性などの要素を仕事に付加して、「自己実現系ワーカホリック」を生み出すことが、きわめて好都合なのである。