from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

『政府は二流』と呼ばれても仕方あるまい

富士通総研大田大臣の演説の背景は何か」から。

デフレはなぜ起こったのか。バブル崩壊の後の過剰設備、過剰雇用のため需給ギャップが拡大したというのが一因である、というのが通説だ。だが2006年に需給ギャップが解消した後もGDPデフレータがマイナスなのを見ると、かかる説明だけでは説得力がない。中国からの安い輸入品のせいにするエコノミストもいるが、それなら欧米でもデフレになっているはずだ。本当の理由は賃金が下がり続けたことにある。日本の賃金は1990年代後半以降ほぼ毎年下落し続けた。その間も生産性は上昇し続けたから、単位労働コストはこの期間ほとんどマイナスの成長である。これはほかの先進国には見られない現象だ。つまり賃金は生産性の上昇に追いついていかなかった。これがデフレの原因である。
もし大田大臣が日本経済の地位の低下を心配するなら、金利を上げ、賃金を上げることだ。その結果円安もデフレも止まるであろう。今まで日本はバブルの後始末を優先して国民生活など重要な政策課題を後回しにしてきた。企業は円安、賃金安、金利安の三重の追い風で利潤を蓄え体力を回復した。だが過度に輸出に依存した成長は当然のことながら豊かさの伴わない成長になる。そのマイナスの効果は海外に行けばすぐわかる。世界中どこへ行ってもホテルやレストランの高さに驚かされる。 だが彼らやほかの外国人はそんなに高いとは思っていない。日本人が賃金カットと円安で購買力を失っただけのことだ。逆にかつて物価高で悪名高かった日本国内では、物やサービスが安くなり、外国人観光客が増えている。円に対して5割も高くなった豪州からは北海道にスキー客が大挙して押し寄せてリッチなバカンスを楽しんでいる。その有様を横目で見ながら働いている日本人にはある種の敗北感が沸き起こる。80年代の円高時代とは逆の光景だ。円安は企業にはよくても国民全体としてはマイナスが大きい。極端な円安に依存した景気回復は終わりにしたほうが良い。