from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

特別な日本経済

JMM「他の先進国と比べ日本経済はどこが特別なのか?」の山崎元さんの回答から。

過去の景気回復局面では、企業の利益が増えると、ほどなく従業員の給料が上がりましたが、近年は、そもそも利益を増やす手段として企業がコスト削減を使ったことや、過去数年の間に、利益の株主への配分がより強調されるようになったことなどから、多くの企業が非正規雇用の比率を増やすなど、利益の従業員への還元を後回しにしました。
こうしたデフレ的感覚が消費者に残っている間は消費者物価が上昇しにくいのは当然でしょう。これを克服するためには、一般消費者の名目所得が増えて、且つ消費者物価が上がり、消費者がインフレ的な状況に「慣れる」必要がありますが、日銀の金融政策は、昨年の量的緩和解除、ゼロ金利解除から、再度の利上げと、あたかも国民の「インフレ慣れ」を許さないことを目的にしているかのような推移を辿っています。
量的緩和解除の際のリリース文には0%〜2%のインフレ率を望ましいものと考えるという表明があり、明確にプラスのインフレ率を指向するかのように見えましたが、過去の二度にわたる利上げが消費者物価の対前年比がマイナスの状況で行われるなど、金融政策の面からも、国民がプラスのインフレ率に対する自信を持ちにくい状況になっています。また、財政面でも、近年、財政再建が強調され、目下大きな赤字ではあるものの赤字の幅は縮小する傾向にあり、近い将来の増税の必要性が政府・与党(の現在の主流の人々)によって常に強調されています。デフレ下で、金融の引き締め(方向として)を行うこと、財政再建を強調することは、経済政策の常識に照らすと、日本はかなり「特別」であるといえそうです。
ゼロ金利解除以後の日銀の行動や発表から推測すると、現在の日銀の上層部は金利と名目成長率との乖離があまり大きくない方がいいと思っているようであり、また、株価や地価といった資産価格の上昇が行きすぎないようにということに対してこだわりがあるようでもあり、政府が一時強調していた名目成長率の引き上げに関しては大きなプライオリティを置いていないように見えます。

NBonline【山崎養世の「東奔西走」】高成長に戻る世界経済と取り残される日本 成功の記憶を捨て、新たな経済の仕組みを見据えた1年に

よく日本の低成長は少子高齢化が原因、と言われますがそんな単純なものではありません。韓国や台湾、シンガポールなどの先進国や中国を含めてアジア全体で少子高齢化が進んでいるのに、日本だけが大きく経済成長が止まっているのには、もっと根本的な原因があります。
このままでは、日本経済の地盤沈下はいっそう加速するでしょう。かつて日本に消費財の製造業で敗れた米国や欧州は、80年代以降苦労しながら日本への敗北から学びました。そのうえで、既存の工業社会に頼らずに成長するために、産業構造と国土の転換を成し遂げました。
米国では、企業のローカル化とグローバル化の同時進行でした。ニューヨーク以外から新しい世界企業が次々に生まれるようになったのです。そのために、減税と航空、金融、通信のビッグバンを行い、地方からでも世界とビジネスができる経済をつくりました。
欧州はEU(欧州連合)の統合という大事業を成し遂げました。そのうえで、文化を生かし、田園を中心とした農業、観光、伝統、環境をミックスした新しい経済をつくり上げ、さらに企業もグローバル化しました。新しい欧州の強さがユーロの強さに表れています。
ところが、日本は大きな変革をほとんど行っていません。小泉改革の最大の功績は、欧米では93年に終わった、財政資金を入れた銀行と大企業の救済と整理でした。新しい経済ができたわけではなかったのです。
それなのに、痛みが大きかった分、日本が大改革を成し遂げたような錯覚に陥っていました。だから、80年代で有効性が終わった東京一極集中の製造業中心、輸出中心の国家モデルから脱却していません。ところが先進企業は海外に出ていきますから、国内経済の空洞化は着実に進んでいるのです。
それでいて、高速道路に代表されるように、国内のコスト構造は高いままで、文化やサービス産業や観光、農業など欧州型の産業は育っていません。
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レーガントウ小平が実行したような企業と投資への減税や地方への思い切った経済の拠点の移動の気配もありません。地方からの経済成長など、日本のエリート層では本気で考えられていないのでしょう。政府が議論するのは増税であり、日銀が議論するのは金利引き上げです。実行されれば、さらに景気は落ち込むでしょう。