教育基本法改正案が衆議院特別委員会で与党単独で可決された。教育をめぐる深刻な問題に直面しながら論議を尽くしたとはいえず、改正を急ぐことに国民の理解が得られるのか極めて疑問だ。
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政府が改正案に国民の理解が得られた根拠としていた教育改革タウンミーティングでのやらせ質問が発覚し、その根拠が崩れたことは伊吹文明文部科学相も認めている。
安倍首相の言うような重要法案であるから、政治日程を優先したような野党欠席での採決は、国民に受け入れられるとは思えない。
法改正を前に、いじめ自殺や高校必修漏れ問題など、教育の本質にかかわる問題が次々と噴き出してきた。国民が教育に求めているのは、こうした現実問題への対応だった。このため、基本法についての論議は十分ではなかったきらいがある。
しかも、いじめ問題などで浮かび上がったのは、文科省の無責任さや、教育委員会の責任逃れと隠ぺい体質である。
文科省幹部の上意下達による“世論偽造”に等しいやらせ質問や、四年前に知りながら放置していた必修漏れなどが次々と露呈し、国民の信頼を失ってしまっている。自らの姿勢を正さずして、教育基本法改正を語る資格があるのか疑問だ。
改正案そのものの問題点も残ったままだ。「郷土と我が国の伝統と文化を愛する態度を養う」など、愛国心や徳目は大切だが、法律で強制するものではない。国家による教育への管理・統制が強まることも心配される。
産経新聞「【主張】教育基本法改正 やむをえぬ与党単独可決」。
自民、公明両党は今国会の焦点である教育基本法改正案を野党欠席のまま、衆院教育基本法特別委員会で可決した。16日に衆院を通過させ、参院に送付する予定だ。
民主党など野党は「採決が前提にある限り、委員会の質疑には応じられない」と欠席した。与党の採決を受け、野党はすべての審議を拒否することにした。
この改正案は戦後教育の歪(ゆが)みを正し、教育の主導権を国民の手に取り戻す意味合いがある。与党単独の採決になったが、やむを得ない。
nikkeibp.co.jp「立花隆:踏みにじられた教育基本法審議」。
11月15日、与党の単独強行採決で、教育基本法改正案が衆院特別委員会を通過した。与党は16日に衆院本会議に同法案を上程。形式的な審議をした上、採決まで一気にやってしまった。法案はすでに参院に送付されている。
それほどバタバタ大騒ぎでやってしまったのは、12月15日で会期が切れてしまう今国会の会期中に、同法を成立させるためである。よく知られているように、衆院を通過したあと、1カ月の時間が経過すれば、参院の審議内容がどうあれ、法案は自然成立の運びになる。
これこそ1960年5月19日・20日の安保国会で、岸信介がやったことと同じである。
nikkeibp.co.jp「大前研一:「全国一律」教育から脱するべきとき」。
日本の文科省は日本全国、同じ指導をしなくてはいけないと決めてかかっている。安倍首相の考えもバウチャー、愛国教育とか言っているが、全国一律であることに違いはない。個々の高校が特色を出すという考えは持っていないのだ。
今回の未履修問題で文科省は相当にバッシングされている。だからといって文科省が変わることはない。文科省に「変われ」というのは、犬に「ニャーと鳴け」と言っているのと同じだ。そしてまた、有名大学への進学率で高校の良しあしが決められてしまう状態が続く以上、この手の事件は今後も手を替え品を替えて浮上してくることだろう。
今ほど大学の価値が下落している時代もないというのに、大学に入るために高校を歪めるという、なんともお粗末な話ではある。