from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

匿名の欲望

新潮6月号「徹底討論『ウェブ進化と人間の変容 第一部』梅田望夫×平野啓一郎」から。

平野 ・・・日本だと、今風の言い方なら、「場の空気を読む」という感じが強くて、どうしても一種の抑圧が働く。その「場の空気」というのは、大体、個性というようなものを排除する性質のものですよ。そうして、そこで言い残したことが、ブログにこぼれ落ちていってるんじゃないか。・・・ネットの世界に出口がない時代には、結局、現実の世界で自分の署名とともに言いたいことを言うしかなかった。それが、現実とブログの世界で、建前と本音とが使い分けられるというモデルを信じるような時代になったとして、僕が興味があるのは、そういう二重生活を、例えば今、三十代でブログ書いている人が八十歳まで続けるのかということなんです。
梅田 そうですか。僕はあまりそういうことを感じないのは母集団が偏っているかもしれません。ある程度ハイエンドで読むには値する情報を発信している人のものしか読んでいないからなぁ。
平野 情報摂取態度としては、それが一番クールなんでしょうし、実際のところは、僕もそうなんだと思います。だけど、もっと議論を極端にすると、一方で、人間の中には、個人の独創とは言い難いような匿名の欲望があって、それらは社会的なコードに従わないものが大部分でしょう。