from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

「トニー滝谷」という映画を観た

毎月1日は、映画の日ということで、入場料が千円になる。ということで、新宿まで映画を観に行った。

観た映画は、市川準監督の「トニー滝谷」。村上春樹の同名の短編小説を映画化したものだ。主演は、イッセー尾形宮沢りえ。トニーの父親、滝谷省三郎は戦時中を上海でトロンボーン奏者として過ごし、戦後捕らえられたが、なんとか昭和21年の春に帰国した。実家は焼け野原になっていて、身内はいなかったが、母親の親戚の紹介で結婚。結婚したその翌年にトニーが生まれたが、妻はトニーが生まれた三日後に死んだ。滝谷省三郎はしょっちゅう演奏旅行に出かけ、家政婦などが面倒を見てくれるだけで、ほとんど一人で大きくなった。美大に入り、卒業後、イラストレーターになった。彼の家には様々な出版社の編集部員が出入りしていた。そのうちの一人、小沼英子を好きになり、結婚した。英子は、トニーとって申し分ない女性だったが、洋服や靴の買い物依存症の持ち主だった。買い物依存症に悩む英子だったが、しばらくして交通事故で死んでしまう。トニーは英子が残した服や靴を見ていると虚しさを感じ、その服や靴を身につけてくれるアシスタントを募集した。英子と同じ体型の女の子、ひさこが応募してきて採用した。その彼女に一週間分の洋服と靴を持たせて帰られたあと、気が変わり、もう来なくていいと連絡するが、日が経ってから彼女を思い出し、電話を掛ける。

トニーの大学時代を演じたイッセー尾形には、笑ってしまった。滝谷省三郎の方は良かったけど。アシスタントに募集してきたひさこを演じた宮沢りえは、「ローマの休日」のオードリー・ヘップバーンを思わせた。拒食症を乗り越え、いい女優になってきた。

孤独を感じているときにこういう映画を見ると、その孤独がもっと深くなる。村上春樹の小説のように。映画館を出ると、道行く人との距離がいつもより広がった気がした。

映画を見て、新宿駅に向かって、靖国通りを歩いていると、パトカーが何台も止まり、人だかりがあった。近づいていくと、ブルーのビニールシートで路地が封鎖された。じばらく見ていると、シェパードを連れた警察官が出てきた。現場に大勢いた警察官は緊張しているようでもなかった。また、見物人達は静かに様子を見守っているだけ。中国だったら、大声を出す人が一杯いて、大騒ぎになっているだろう。帰ってから、テレビでニュースを見ると、雑居ビルで強盗殺人事件があったと報道されていた。

今日も上海から電話があった。昨日お友達に会いたいから保育園に行くと言い出したが、朝起きると保育園に行かないと言いだし、結局行かなかったようだ。妻のお父さんがどこかに子供を連れて行き、疲れて寝てしまった子供を抱っこする羽目になり、疲れ果てたようだった。