NBonline『世界が踊る8%成長、実態は「官製バブル」』から。
不気味なのは、売れ行きが戻ってきた原因がはっきり見えないことだ。
「たぶん、公共事業が増えた影響だと思うのだが、景気の実感と売り上げの回復ぶりが、どうもしっくりと一致しない」というのは、冒頭の総経理のコメントだ。「景気が良くなるというのは、もっと、ワサワサした感じなんだが」と首をかしげる。
北京市内を歩いてみればすぐ分かる。新築のオフィスビルがそこかしこにあるが、ほとんど空っぽだ。外国人向けの高級住宅地である望京地区の韓国人は以前、1万5000人以上いたが、今は1万人を切って戻ってくる気配もない。家電量販店も平日は閑散としているし、十里河にある広大な家具市場も、休日なのにお客よりも店員の方が多いくらいだ。
北京のオフィスビル市場は、市政府の指導もあって、表面上、家賃を引き下げることはない。その代わり、内装工事期間中の家賃を免除したり、最初の1年に限って年間3カ月分の家賃を免除するといった実質的な値引きが行われる。
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クルマの販売が好調な理由の1つを聞いて驚いた。公共事業や国有企業のプロジェクトを受注するための「贈答品」として使われているというのだ。政府機関や国有企業の場合、使う人のランクに応じた車種の公用車が無料で支給される。したがって当事者に贈答するわけではない。その家族への贈答ということになる。
クルマだけではない。国有企業や政府の幹部が家を新築する場合、内装工事や家具、家電製品一式を「贈答」するのも、ごく当たり前のことのように行われている。こうした「贈答品市場」が拡大しているわけだ。
家族が対象であれば贈賄にはなりにくい。高級官僚の接待に使われる北京市内のあるレストランも、売り上げの落ち込みはほんの一時的なもので、今年の4月以降は、前年を上回る売り上げを計上しているそうだ。
やっと一息つきつつある中国の日本企業だが、この景気回復は、「官製バブル」ともいうべき人為的なものだといえる。