from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

国家存亡の危機!?

JMM「『反テロ戦争』の現在(911六周年)」(冷泉彰彦)から。

体調不良で辞任を発表した安倍首相の表情、そして特措法の問題を「国家存亡の危機」などと絶叫する自民党両院議員総会の様子などをアメリカから見ていますと、その深刻さには困惑させられます。まるでアメリカは血眼になって「反テロ戦争」を戦っており、その支援活動であるインド洋での無償給油活動を日本が止めることは、たいへんな裏切りになる、少なくともそんな印象を安倍首相なり一部の自民党議員は持っているように見えるからです。
では、実際にアメリカにとって「反テロ戦争」の現在というのは何なのでしょう。例えば2001年の9月から10月にかけて「怒りの拳」を振り上げるかのようにタリバン政権に襲いかかったような「復讐心」、あるいは2003年のバグダッド侵攻に引き続いて、フセインの息子たちを殺害してその遺体の写真を公開するといったカ
ウボーイ気取りの「殺気」といった心情は2007年秋の現在も残っているのでしょうか。
答えは「ノー」だと思います。
勿論、アフガンでもイラクでも戦闘は続いているのですが、アメリカの社会からは「殺気」は消えつつあります。また、その流れは止まることはないでしょう。まずもって「アメリカは殺気に包まれている」だから「敵か味方かの区別に敏感だ」とか「国際法国連の枠組み(この二つは実は同じことですが)より有志連合を優先すべきだ」という前提は崩れていると見るべきだと思います。
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政治的軍事的スローガンとしての「反テロ戦争」というものは、良い意味で解体されつつあるのは明らかです。にもかかわらず、日本の政治家が「日本人の犠牲者も24名いる」と叫びながら「給油は国際公約」だと思い詰めている姿は、ただひたすらに不自然に思えます。そうした言動が政治的モメンタムを獲得するための芝居であるのなら単に不誠実なだけですが、もしかして国際社会を理解する上での情報不足、時間感覚のズレがそこにあるのだとしたら、これは恐ろしいことだと思います。