from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

覇権国家とグローバリゼーション

MouRa 萱野稔人交差する領域〜<政事>の思考〜 第1回 変貌する国家」から。

アメリカがフセイン政権を倒そうとしたのは、フセインが石油の決済をドルではなくユーロでおこなおうとしたからだ。フランスやドイツなどのユーロ加盟国がイラク攻撃に反対したのはそのためである。
・・・・
現代の覇権国家は、かつての帝国主義とは異なり、みずからの経済的利益を増大させるために「周辺」地域の土地をみずからの主権のもとに併合するようなことはしない。そうではなく、各国家の領土主権をいったんは認め、そのうえでみずからに利益をもたらしてくれる経済システムやルールをそこに課そうとするのだ。帝国主義の時代においては、国家の軍事力は、「周辺」地域を植民地化し、領土を拡大するためにもちいられた。これにたいし現代は、自国の権益とむすびついたグローバルな経済システムの確立や維持のために国家の軍事力がもちいられるのである。
 このとき従属国家の主権は、形式的には認められるが、実質的にはその経済システムによって空洞化されるだろう。国家はいまやそうしたシステムの管理者として姿をあらわす。かつては主権の一体性や力能をあらわすものだった領土が、国家の活動において重要性を低下させてきている。領土を取得することはもはや「中心」国家の覇権にとって本質的なファクターではない。国家の存在がますます「脱領土化」(ドゥルーズ=ガタリ)してきているのである。

これはアメリカが戦後一貫してやってきていることじゃないの。
MouRa 萱野稔人交差する領域〜<政事>の思考〜 第3回 国家・国境・領土」から。

アメリカがみずからの覇権を世界へと拡大するのは、植民地の建設をつうじてではない。植民地の建設とは、言いかえるなら、みずからの支配権のおよぶ地域内で国境をとっぱらってしまう、ということだ。アメリカは、みずからに有利な経済システムを押し付けたり、相手国の政治体制をアメリカ寄りのものにつくりかえたりすることで覇権を確立する。国境はそのままに、しかし領土主権を空洞化していくような制度的仕組みをその地理的な枠組みのうえにかぶせるのだ。
グローバリゼーションは、こうしたアメリカのやり方が一国の政策をこえて全面化することで進展した。グローバリゼーションとはだから、これまで少なくとも先進国のなかでは一致していた、領土をめぐる二つの枠組み――「排他的領土性」と「国家領土」――を分離していくようなプロセスである、と考えることができる。国家が領土に対してもつ関係はけっして単一ではない。