安倍政権の重要な政権構想にイノベーション25がある。日本経済にイノベーションで新しい力を与えて2025年の社会を作ろうというのだ。これほど本末転倒な話があるだろうか。識者が会議で重点投資分野を決めるらしい。今は19世紀か? 日本政府は富国強兵か重商主義政策でもとるつもりだろうか。
イノベーションとはヨゼフ・シュンペーター(1883?1950)によって提示された概念で、「技術革新」あるいは「新結合」と訳す。それはけっこう。内燃機関の登場はそれだけではおもちゃにすぎず、鉄道や汽船が走って世界交通のイノベーションとなった。だが、それは何千何万という起業家が死屍累々の失敗を積み重ねての結果だ。
政府主導で重点投資分野をつくるのは、税金で万馬券を買うようなものだとどうしてわからないのだろう。政府が金をくれるというので電機各社が渋々参加している日の丸検索エンジンはどうだ。「グーグル」と「検索」とは、次元が違うものだということを知らないのか。
nikkeibp.jp「技術革新で長期戦略策定・安倍首相が所信表明」
技術革新の長期戦略は「イノベーション25」と題し、医薬や工学、情報技術(IT)などの分野別に2025年の技術変化を予測しながら重点投資分野を絞る。高市早苗技術革新担当相の下に10月に検討チームを設置し、来年2月ころに対象技術を選定する。総合科学技術会議や経済財政諮問会議の議論を経て、来年6月をメドに閣議決定する「骨太方針2007」に盛り込む方向だ。