from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

愛国心指導

東京新聞教育基本法改正案

大難産の末、自民、公明両党で決着した教育基本法改正案の協議。両党の主張が衝突した「愛国心」をめぐる表現は、結局、双方の顔を立てる「国対的」な妥協で文章がまとまった。しかし、この表現は「教育の憲法」といわれる同法の条文として、ふさわしい内容なのだろうか。ベストセラー「国家の品格」の著者・藤原正彦お茶の水女子大教授の話を聞きながら、読み解いてみたい。 (政治部・新開浩)
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――今回の協議では「国家の品格」で述べられた「祖国愛」が随分取り上げられました。
「私は本で『祖国愛』を自国の文化、伝統、情緒、自然を愛することだと定義したんです。だから、この文でいうと『伝統と文化を尊重』することがまさに『国を愛する』ことなんですよ。内容が重複してしまっている」
――自民、公明両党の議論では「愛国心」をめぐって膨大な時間を費やしました。
愛国心なんて今すぐ廃語にすべき言葉です。この言葉は明治以来の失敗の最大の原因でしょ。愛国心という言葉には、二つの相反する異質なものが混じっている。一つはナショナリズム。これは国益主義で、他国はどうでもいいという考え方。二つ目はパトリオティズム。つまり祖国愛。これはすべての人間が当たり前に持っていないといけない。でも、戦後の日本は両方を捨てた。それで、今ごろになって、汚い手あかの付いた愛国心という言葉を使おうとしている」
――どういう表現がいいのでしょうか。
「『自国の文化、伝統、情緒、自然をこよなく愛する』。これでいいんです。趣味の問題ですけど。でも、私が首相じゃないから、『書き直せ』というわけにもいきませんしね」
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自民党内の「藤原ファン」からは「『愛国心』が無理なら、法案に盛り込むのは『祖国愛』にしてもいい」という意見もあったほどだ。
自公双方にとって「国家の品格」は、理論武装のための格好のテキストだったようだ。