from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

論文捏造の真相はいかに(2)

JMM『「黄禹錫博士」Younghee Ahn の韓国レポート』
筆者は1月12日の午前9時、ES細胞で有名な黄禹錫(ファン・ウソク)
博士の記者会見場にいた。黄(ファン)博士に関しては昨年の暮れに書いたことがある。世界で初めてヒトクローンES細胞培養成功者として「最高科学者」などの栄誉をほしいままにしていた科学者の論文捏造疑惑である。その後、疑惑に関しての調査委員会が結成され、先日「ES細胞は存在しなかった」という調査委員会からの発表があった。それを受けての「対国民謝罪記者会見」というものだった。
正直筆者は知りたかった。数年前に会ったファンソウル大学教授はとても誠実そうだが小心者に見え、「論文の捏造」などという大胆なことをしそうな印象は受けなかったからである。
記者会見は10時半からなのにすでに6時から会場にはマスコミがつめかけていた。記者会見ではあったが、一般公開されたものだったので後列には市民たちが所狭しとつめかけていた。報道陣と市民たちがひしめく会場にファン博士はきっかり10時半に姿を現した。その後ろに若い彼の研究室の研究員たちを携えて。
会見の始めに「おはようございます。毎回、一度でなく二度でもなく、このように惨憺たる姿で皆様にお会いすることになり誠に恐縮です」と、言った。彼の会見を聞くと、彼は弁解に徹していた。謝りながらも結局は自分のせいではないけれど、自分が責任者だから責任を持つという。実験の再確認などまったくせず論文を提出したことを「自分は一度信じた人に対しては100%の信頼を置いているから」というのはどういうことなのか。科学音痴な筆者でも納得できない。
そして、無性に何か演出っぽい感じを受けてしまった。彼の妙に説得力のある話し方が特に鼻につく。例えば、「私は狂っていました。仕事に狂っていたのです。私の前には何も見えませんでした。ただ、研究によってこの大韓民国という国が世界の中心に立派に立てないだろうかと、それだけを見て参りました。私は最初の妻と離婚しました。このすべてが私の間違いですが、その一つの要因の中には学問がやりたかった、そんな理由があったのです。家庭を含めたすべてのものを投げ出してやった(ここでちょっと目頭を赤めた)ことの結果は惨憺たるものです」
また、なぜか彼の会見には「大韓民国」という言葉がよく出てくる。そこが彼の支持者を熱狂的にさせる部分かも知れない。彼にはいくらでも卵子を提供すると豪語した熱狂的な支持者の人がまだいる。彼の会見によると、「先生の行く道ならばたとえそれが地獄でも付いていく」と言ってくれた研究員たちをこの日は後ろに立たせていた。
彼の会見が終わった後、後方から拍手と「がんばって」という黄色い声援が聞こえた。そして、すぐ「謝れ!ひれ伏して謝れ!話はいつも弁解ばかり嘘ばかりだ!」という男の罵声も聞こえた。