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子育ての日々の断片を書き綴る

原油価格高騰

nikkeibp.co.jp「原油価格高騰の“嘘”」。

2004年初めに1バレル30ドル余りだった原油価格(WTI=ウエスト・テキサス・インターミディエート)が、この4月21日に75ドルまで上昇した原因としてしばしば語られるのは、1:世界的好景気による需要増、わけても米中消費の拡大、2:原油供給懸念、3:イランの核開発本格化など間欠泉のように吹き上がる地政学的リスク−−だろう。
しかし、この一般論には落とし穴が多い、としたらどうだろう。
まず、米中について言えば、米国は原油消費量世界一で、中国ははやそれに次ぐ位置にある。例えば、米国では、2004年に一般に使われる改質ガソリン(有鉛ガソリンを無鉛化したもの)の在庫が減少して、原油価格の高騰を招いた。
一方の中国も1998年当時は原油の輸入依存度15%程度だったのが、2005年には45%に急拡大。当然、経済発展による消費量の急増が原因だが、国内生産を輸入が上回る純輸入国への“転落”が間近となるに及んで、原油価格を押し上げたのは間違いない。
しかし、だから世界の原油需給が引き締まって価格が急騰した、というほど真相は単純ではないのである。
知る人もあろうが、米中は原油の中でも、軽質油と呼ばれる油種を主に消費する。日本などが主に使う重質油との最大の違いは、油中に含む硫黄分の多寡と、原油からガソリンなど中間製品を抽出できる効率の違いにあるという。
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年来の知人である原油問題の専門家に言わせれば、「市場原理万能で投資効率を追い求める米メジャー(巨大石油会社)は、だから軽質油を買いたがる」し、「群小の石油精製業者が古い精製設備を大量に抱えている中国も、そのせいで同じ方向に行く」。
しかも、原油などの世界の取引の中心であるニューヨーク・マーカンタイル取引所で原油の国際指標となっているWTIは、軽質油中心の市場だが、そこで取引される原油の1日当たり生産量は、世界の原油生産量のわずか2%にすぎない。
もちろん、両国とも消費のすべてが軽質油ではないが、この2年の原油価格高騰は、一般的に言われるほど米中の好況による需要増要因だったわけではないのである。
突き詰めて言えば、原油の中の一部市場(軽質油)に2大消費国が押し寄せ、しかもごくわずかな取引量でそれが作り出された面も大きかったのである。