from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

JR羽越線脱線事故(6)

朝日新聞事故の羽越線運転再開 遺族「天災ですまさないで」

JR羽越線の特急脱線・転覆事故で、家族を失った秋田県内の遺族は「まだ気持ちの整理がつかない。そっとしておいてほしい」と話す。
運転再開前、JR東日本から安全対策などについて説明があった。
「大事故が起きたから、JRはあれをやる、これをやるというが、家族は亡くなってしまった……」。納得し難い気持ちが残った。
特急の運転士(29)は事故後、「突風が来て、車体が浮いた感じがした」と話している。山形県警の捜査では、突風が事故を引き起こしたとの見方が強まっている。JRの安全対策も突風に特化している。
「風のせいなのか。運転士が異常を感じたその時、どういう操作をしたのか。運転技術に未熟なところはなかったのだろうか」。いくつもの疑問が浮かぶ。が、JRからその部分の説明はないという。「天災で終わりにされては困る」

日刊動労千葉羽越線列車転覆事故は人災だ」

事故当日は、山形県内に「暴風雪警報」が出されている状況であった。
暴風雪警報の発令とは、単に強風が吹くおそれがあるというような簡単な事態ではない。次のように、鉄道気象通報等手続(規程)に定められた強風に関する区分でも、重大な災害が予想される、最大の警戒を要する事態である。まさに嵐のような状況だったということだ。つまり、本来なら、警報が出された時点で、あらかじめ列車の運転速度を制限する等の運転規制を実施しておくべき状況であった。
実際、新聞では、事故当時、寒冷前線山形県内を通過し「経験したことのない突風や強烈な雷光があった」と報じられている。そのような状況下、運転規制もせず120㎞/hで列車を突っ走らせるなど、まさに無謀としか言いようのないことである。
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02年の国土交通省令の抜本的な規制緩和に伴って、同年、JRでも規程の抜本的改悪=規制緩和が行なわれた。運転取扱いの基本を定めた「運転取扱心得」は「実施基準」と名称も変更され、「災害が発生するおそれがある場合又は気象通報を受領した場合は、列車又は車両の運転に特段の注意をし厳重な警戒をしなければならない」ことを定めた気象異常時等の取扱いについても、次の項目が削除された。
第328条(風速が20m/h以上になったときの措置)   
2 風速計を装置していない停車場の駅長は、目測により風速が20m/h以上になったと認めたときは、その状況を輸送指令員に報告するものとする。
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この規程改悪について、JR東日本は次のように説明していた。
風速の観測等は風速計によりプレダス等で管理されシステム化されており、風速計を設置していない駅長(ほとんど全ての駅長ということだ!)に対して、目測で風速を計り指令に報告することを義務付ける規定は現実的に不可能であるため、義務付けと別表を削除する。 ここで言われていることはまさにペテンだ。システムが導入されようと、 「不可能」な理由など何ひとつない。不可能となったのは、駅の徹底した合理化によって、首都圏以外のほとんどの駅が、無人化や外注化=委託化されたためだ。かろうじてJR社員が配置されている駅でも、運転取扱いの資格をもった駅員の配置はよほど大きな駅でなければ無くなっている。あるいは、 人員削減によって、周辺の状況を把握し逐次報告するような余裕は全く無くなっている。だから「不可能」なだけだ。
結局システムの導入も、より安全性を向上させるためのものではなく、徹底した要員削減をおし進めるためのものでしかない。規制緩和と要員削減がお互いに拍車をかけ合う形で、安全の崩壊が激しく進められているのである。
今回の事故でも、酒田駅の駅長が様々なコメントをしているが、酒田駅は、 事故現場から9㎞近くも離れた駅だ。その間には東酒田、砂越という二つの駅があるが、両駅とも無人駅であった。 つまり、暴風雪警報が出されているなか、現場の状況を理解して列車の運行を判断した者は誰も居なかったということだ。