from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

ネット・ジャーナリズムの可能性

ネットは新聞を殺すのかblog」が久しぶりに更新されたようだったので、読みに行くと、毎日新聞主催の『インターネット時代のジャーナリズムのあり方を考えるシンポジウム「ネット・ジャーナリズムの可能性」』のことが紹介されていた。さっそく読みに行くと、興味深いことが色々書いてあった。
米コロンビア大のエリ・ノーム情報通信研究所長が今のままだと新聞はダメになっちゃうと言っている。アメリカでは、日本の全国紙のような新聞はなく、ほとんどの人が各地方で発行されている新聞を読んでいる。ジョージア州アトランタに住んでいる人なら、「アトランタ・ジャーナル」といった具合に。「大手新聞による市場支配を規制!?(2)〜世界の主要新聞の発行部数は〜」にあるように、有名なニューヨークタイムズワシントンポストでも日本の全国紙の10分の1ぐらいしか発行されていない。元々インテリを別にして新聞をよく読んでいる人が日本に比べて圧倒的に少ない国だから、インターネットが普及すれば、読者数が激減することは想像できる。
では新聞社はどうすればいいのか。エリ・ノームさんは、

基本的に4種類のカンパニーモデルがある。第一は小さな専門家のコンテンツプロバイダーになること、第二はスペシャリストをパッケージとしてバンドルすること。例えば犬とネコの話題をまとめて提供する。第三はテレビなどと垂直統合すること。第四は大手のインテグレーター、さまざまな情報源の情報を統合するニュース会社になること。

と言い、このうち「将来はインテグレーターのモデル」が有望だと。記者はほとんどいらなくなる訳だ。アメリカの新聞社は発行部数に見合って記者が少ないだろうから、そういうビジネスモデルも成り立つのかも知れないが、日本じゃどうだろう。
韓国のオーマイニュースのことはよく知らなかったが、ここに書いてある「オ・ヨンホ氏の特別講演」の内容でよく分かった。

“すべての市民が記者”というのがオーマイニュースのコンセプト。これまでは伝統的な記者だけが新聞記事を書いた。今はすべての市民が書ける。市民記者は3万8000人に上った。

市民記者の数がすごい。「市民記者は1日150〜200本の記事を書く」という。それを50人程度の専門記者がコントロールして載せている訳だ。それでいて、「市民記者(のトラブル)は10件に満たず内容もたいしたものではない」と言う。それが成り立っているのは、記名記事であることと読者のコメントが付けられるようにしているからのようだ。「多いときは8万5000もの意見がついた」ようだ。

市民参加のオーマイニュース型メディアの出現で、紙新聞の職業記者が作ったスタンダードが揺れている。記者はだれで、ニュース価値とは、良い記事とは、こうしたスタンダードはこれまで職業記者が作った。しかし、インターネットは時間と空間を飛び越えるので、新たなスタンダードがいる。プロだけでなくアマチュアも参加できる。この流れは民主主義を大きく広げ、質を高める。

韓国では、既存のメディアにもいい影響を与えているようだ。この背景には、一般の市民が政治や社会問題に強い関心があり、オ・ヨンホさん自身が投獄された経験があって「われわれが一緒になれば世の中を変えられるとの信念がある」からだろう。

全国紙の中では毎日新聞が一番ネット・ジャーナリズムのことを気にかけているようだけど、

ちゃぶ台の上で新聞読む人がいる限り、新聞はでる。もっともそれで経営できるかが一番の問題だが。
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1年間MSNと組んでみると、ヤフーは検索に強いなど各ポータルに特徴があることが分かった。MSNには毎日、TBS、スポーツニッポンが連携して、ニュースに強いとなれば、集まってきた人にサービスができるかもしれない。

こんな危機感がないようなことを言っていて大丈夫かな。「ちゃぶ台の上で新聞読む」人なんかほとんどいないと思うけどね。
これに関連して、「小林恭子の英国メディア・ウオッチ」に、

「必要な情報の欠如」と「国際問題に関する国民側のやや低い関心・切実感の欠如」が、テクノロジーの発展以前の問題として、存在しているような気がするのだ。

とあった。関心を持ちさせすれば、「必要な情報の欠如」はインターネットが解決してくれるだろうが、国際問題に関心を持たないといけないという「切実感の欠如」の方は難しい。自分自身の生活に影響を与えているという想像力が必要になるからね。