from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

インフルエンザ感染拡大の防止策

JMM新型インフルエンザ対策』が爆発的流行を引き起こす」から。

夏休みも明けて2〜3日経ったある日、いつもの診療所に行くと、そこは真冬のピーク時とはいかないまでも、いつものこのシーズンとは明らかに違う混雑となっていた。特に午前中は、1時間あたり約40人の受診者がおり、その約半数は「カゼ症状」や「発熱」といった「急性の患者さん」であった。もちろんいわゆる「インフルエンザ様症状」を呈する患者さんも若干名おられ、1時間に1〜2人ペースで「A型陽性」患者さんが発生したのであるが、これはこの診療所の真冬の状況からすれば、まだほんの少数であり、これら「急性の患者さん」のほとんどは、むしろ軽微なカゼ症状での受診者であった。小児など、もともとコンビニ受診をする患者さんは多いのだが、あまりに例年の雰囲気と違うため、「37度の発熱のみ」で小学生を連れてきたある母親に、今回の受診理由を問うてみた。すると、まさに耳を疑う意外な教育現場の現状を知ることになったのである。
「毎朝登校前に検温をして、体温が37度以上なら学校を休んですぐ病院に行き、新型インフルエンザでないことを確認してもらってから登校するように」
その子の通う小学校では、このように指導されているのだという。また昼過ぎにやって来た、いかにも元気そうな別の中学生は、「授業中咳をしていたら、保健室に行くようにいわれてしまい、そこで検温をしたところ37度と出たのですぐ早退させられ、その足でここに来ました。でも1時間以上も待って疲れちゃいましたよ」と当の本人も、なぜ元気なのにここにいるのか腑に落ちない様子であった。
そのほか、授業中の急な発熱の小中学生や、仕事中の咳を指摘されてあわてて退社してきた一流企業のサラリーマンなど、受診者の多くは典型的なインフルエンザ様症状を呈していないか、もしくは症状発現ごく早期の状態であった。
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9月1日付けで文部科学大臣より、子供たち、保護者、学校関係者に宛てて、メッセージが発信された。それには、「せきや熱(ねつ)が出(で)るなど、かぜやインフルエンザにかかったかなと思(おも)ったら、すぐにお医者(いしゃ)さんに行(い)ってください」とある。
一見もっともなメッセージだが、このような安易な医療機関の受診勧奨は、「カゼ」の子供たちにインフルエンザ感染の機会を増やすだけだ。「すぐに」医療機関に行っても、検査キットも無尽蔵にあるわけではない。1〜2時間ほど、本物のインフルエンザ患者さんの隣で待たされた挙げ句に、「症状がもう少し典型的になってから検査しましょうね」と何もされずに帰されることも十分あり得ることだ。そんなお子さんが、4〜5日後にインフルエンザ様症状で来院したなら、それは明らかに診療所から持ち帰ったウイルスだと言えるだろう。
新型インフルエンザ対策」として今も多くのメディアが「手洗い、うがい、咳エチケット、そして『おかしいな』と思ったらすぐ受診」と喧伝しているが、インフルエンザ感染拡大の防止策は、「『おかしいな』と思ったらまず自宅安静」、そして不要不急の安易な受診をしないということに尽きる。そして受診をする際には、各人が本当に「今」受診しなければならないかを、一旦冷静に、あわてずゆっくり考えることが必要だ。