from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

偽装助長は消費者?

BPnet「大前研一:食品偽装を助長する政府の責任」。

必要以上に産地にこだわることは、あまりよろしくない(このように書くと産地偽装の問題は消費者に原因があると言っているように聞こえるかもしれないが、もちろん偽装をした生産者の罪の方が大きい)。
また、法律上の抜け穴も多いのが現実だ。そもそも原産地証明とはいうものの、原産地の定義がされていない。だからこそ魚沼産のコシヒカリが現地の収穫量の20倍も出回っている、という異常な事態が起こっているのだ。
浜名湖産のウナギや国産のアサリを例に挙げよう。マレーシアから持ってきたウナギを、浜名湖で1週間泳がせたら浜名湖産のウナギになる。北朝鮮のアサリが、日本の浜で1カ月眠ったら国産になる。ほかにも江戸前のいろいろなものもそうだ。これは、浜名湖産のウナギなのか、国産のアサリと言っていいのか。但馬牛も、松坂や近江に行ってトサツされればそうしたところが産地となる。産地ではなく肉に加工された場所だ。
このようなことは役所も積極的に支援していた。むしろ何をどう呼ぶかに関しては業者からの陳情もあり、役所の判定は現実に引きずられたものとなってきた。
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賞味期限といっても売る側が勝手に決めていいものである。賞味期限を超えたからといって食べられなくなるものでもない。実際に、家庭では賞味期限が切れた食材を食べている例は少なくないだろう。賞味期限とはその程度のものである。新聞が取り上げるニュースとしては、少し弱くはないだろうか。
事実、“at your own risk”の国、米国では賞味期限という言い方はあまり見かけない。いついつまでに売れ、と書いてある。買った人がいつ食べるかは自分で判断しろということである。だから米国人は卵でも肉でも自分でにおいをかいで、フンフン大丈夫、と言って料理にかかる。また冷凍した場合にはほぼ永久に保存できると考えている。賞味期限など書いてない方が都合がいいということである。「お腹をこわした場合のクスリもあるし」という感じである。つまり、賞味期限切れなどニュースにはなり得ないのである。
一方、日本ではことさら賞味期限にこだわる。これが高じて最近はレストランで残った食べ物の「持ち帰り」ができなくなった。いつまでに食べてくれるか分からないのに、こちらが責任を持つことはできませんということだ。しかし、米国ではこれを“doggy bag”と称しておいしい残り物を持ち帰るのがしきたりだ。それで腹をこわしたら“your own risk”ということである。
日本では、保健所の仕事はほかにないのかと思うくらい、この問題に神経質である。世界では、日本の賞味期限切れ以降の衛生状態にあるものでも貴重、というのが実体である。半分腐った魚でも食べざるを得ないところが多いのだ。過保護で、かつ神経質な日本人は、このままいくと世界で最も食あたりに弱い人種となるだろう。