from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

妥協の総裁

ロイター「福田新総裁が誕生、幅広い政策課題で民主党と協議の意向」。

安倍晋三首相(自民党総裁)の辞任表明を受けた自民党総裁選は23日、衆参両院の国会議員都道府県代表による投票が行われ、福田康夫官房長官(71)が330票を獲得し、197票の麻生太郎幹事長(67)を破って新総裁に当選した。
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福田新総裁は、23日午後6時から自民党本部で記者会見し、今後の政策運営について「困難な問題がたくさんある。年金や社会保障全般など大きな課題は、参院で第1党の民主党との話し合いが、欠くことはできない。今後は民主党と話し合っていきたい」と語った。
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総裁選の結果について、山本武彦・早稲田大学政経学部教授はロイターの取材に対し「福田新総裁は、安心・安定・安全を象徴している。今の自民党内のそうした期待を福田氏は示している」と指摘。この先の政権運営では、野党が過半数を握る参院での法案審議が政府・与党にとって障害となるが「日本には妥協の美学がある」とし、福田総裁が妥協を図ることで局面の展開を目指すのではないかとの見方を示した。

時事ドットコム同盟強化を期待=対テロ戦協力には不安も−福田自民新総裁で米

自民党総裁に選出された福田康夫氏に対し、米政府は日米同盟関係の維持・強化を期待している。ただ、不安定な政局の中で内政課題に追われ、ブッシュ大統領が進める対テロ戦への協力がおろそかになるのではとの不安も根強い。

毎日新聞2006年7月24日東京朝刊
「共生経済」へかじを−−経済評論家・内橋克人氏』。

アメリカ帰りのある学者は「格差ある社会は活力ある社会」などといい、「金持ちにうんと金持ちになってもらうほか、日本が豊かになる選択肢はない」とまで公言している。その後、この人物が経済政策を担った。日本財界、超富裕層の長きにわたる宿願が、すべて見事に達せられた。ごく普通に生きる日本人の「不幸の始まり」だ。
社会をむしばむ「格差」を一気に深めたものは、小泉政権が完成させた雇用・労働の解体だ。この政権は「改革」の名において、経済界の悲願であった「雇用・労働の規制緩和」の流れを一気に加速させ、不可逆で決定的なものとした。03年改正における差別的派遣労働の全面解禁(期間の上限延長)、製造業への派遣労働の解禁断行などがその核心的なものだろう。まさにここに「格差問題」の起源は発している。
いま、私たちは「あるべき日本社会」の展望を打ち出さねばならない。時の権力に密着してグローバルスタンダードなる「幻想」をふりまき、「既得権」を糾弾しながら「新規権益」をほしいままにした不公正な「利得者」らをあぶり出すことだ。市場が市民社会を支配するのではなく、社会で暮らし、働く人々を守る新たな「共生経済」へ向けてかじを取るほかにない。
技術革新によって、高い技術を持った熟練労働者の需要が増えている。一方で非熟練労働者は途上国との賃下げ競争にもさらされ暮らしは苦しい。こうした格差拡大をもたらす状況が世界的にある中、政府が取るべき対策はセーフティーネットの整備や教育の充実、より多くの公共サービスを提供することだ。しかし、米国や日本の「小さな政府」政策は全く逆のことをしてきた。
規制には必要な分野もある。不適切な分野、間違ったスピードで規制を緩和してはならない。私が参加したクリントン政権の経済諮問委員会では、社会にとって最善の規制とは何かを考え、多くの規制を撤廃する一方で、新しい規制も加えた。米国民への影響や、生じる格差に大きな関心を抱いていた。しかし、米国が日本へ迫った規制緩和は、米国企業の成功のためであり、日本のためではなかった。
日本は、格差拡大の結果を認識し、格差に対処する政策を採用すべきだ。小さな政府というイデオロギーが良い経済政策を生まないことを認識する必要がある。日本経済全体からすれば、郵政民営化は小さな問題だ。はるかに重要な問題がたくさんある。
格差が経済成長につながらないことは、日本を含む東アジアの過去の成功が示している。格差が少なく、平等な教育が行われ、人的資本がたくみに使われたからだ。
私に言わせれば、米国経済は好調ではない。ただ一つ高い国内総生産(GDP)も悪い指標だ。たいていの人が貧しくなったとしても、GDPは上昇しうる。より重要な指標は人々の生活だ。一握りの富裕層がますます金持ちになり、中間層が貧しくなっていく米国の現実は、今後日本でも起こりかねない。