from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

格差を是正する

BPnet「森永卓郎:節約した人件費の向かった先」。

景気が回復しているのに、働く人の分け前が減っている――このような矛盾した現象を見て、わたしのような人間は「これはひどい話ではないか」と指摘する。
ところが、それに対して政府与党や大企業、あるいはそちら側の立場に立つ評論家は、次のように反論する。「確かに、非正社員増によって労働者の収入は減った。しかし、バブル崩壊のなかで低迷する日本企業がグローバル競争で勝ち抜くためには、コストを削減して製品価格を引き下げなくてはならない。そうしないと、国際競争に勝ち残れないのだ。非正社員増はやむを得ない選択だったのだ」。
つまり、人件費の圧縮は、企業による必死の生き残り策の一つなのであり、これをしなければ日本企業は海外企業に太刀打ちできない。いい悪いは別にして、非正社員の増加は必要なことだったというわけだ。
一見、もっともらしい理屈だが、果たして本当なのだろうか。そこで、これまでのGDP統計をチェックしてみたところ、興味深い事実が浮かび上がってきた。
例えば、2001年度から2005年度にかけての「雇用者報酬」の推移を見ると、8兆5163億円も減少している。ところが、企業の利益に相当する「営業余剰」は、逆に10兆1509億円も増えているのだ。
非正社員を増やしたことで、4年間で8兆円以上も給料を減らしたのに、逆に企業の利益はそれ以上に増えていることを示しているのである。
では、人件費を減らしたことで企業が得た利益は、最終的にどこに行ったのか。
一つは株主である。財務省が発表している「法人企業統計」でみると、2001年度から2005年度までの4年間で、企業が払った配当金は3倍に増えている。
そして、もう一つは企業の役員である。やはり「法人企業統計」によると、2001年度から2005年度までの4年間で、資本金10億円以上の大企業の役員報酬(役員給与と役員賞与の合計)は、なんと1.8倍になっている。さらに、先日、日本経済新聞社が発表したデータによれば、主要100社の取締役の2006年度分の報酬は、ここ1年で22%も増えていることが分かる。
この二つのデータを合わせると、2001年度から2006年度の5年分で、大企業の役員報酬は倍増している計算になる。具体的な額として、日経新聞には、今年の1人あたりの役員報酬は平均6000万円と記されていた。