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子育ての日々の断片を書き綴る

冥王星は、矮惑星(矮小惑星)、小天体?

国立天文台国際天文学連合決議の日本語仮訳」から。

国際天文学連合決議:太陽系における惑星の定義
現代の観測によって惑星系に関する我々の理解は変わりつつあり、我々が用いている天体の名称に新しい理解を反映することが重要となってきた。このことは特に「惑星」に当てはまる。「惑星」という名前は、もともとは天球上をさまようように動く光の点という特徴だけから「惑う星」を意味して使われた。近年相次ぐ発見により、我々は、現在までに得られた科学的な情報に基づいて惑星の新しい定義をすることとした。

  • 決議5A

国際天文学連合はここに、我々の太陽系に属する惑星及びその他の天体に対して、衛星を除き、以下の3つの明確な種別を定義する:
(1) 太陽系の惑星(注1)とは、(a) 太陽の周りを回り、(b)十分大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し、 (c) 自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしてしまった天体である。
(2) 太陽系の dwarf planet とは、(a) 太陽の周りを回り、(b)十分大きな質量を持つので、自己重力が固体に働く他の種々の力を上回って重力平衡形状(ほとんど球状の形)を有し(注2)、(c) 自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしておらず、(d)衛星でない天体である。
(3) 太陽の周りを公転する、衛星を除く、上記以外の他のすべての天体(注3)は、small solar system bodies と総称する。
注1:惑星とは、水星、金星、地球、火星、木星土星天王星海王星の8つである。
注2:基準ぎりぎりの所にある天体を dwarf planet とするか他の種別にするかを決めるIAUの手続きが、今後、制定されることになる。
注3:これらの天体は、小惑星、ほとんどのtrans-Neptunian object、彗星、他の小天体を含む。
国際天文学連合決議:冥王星

  • 決議6A

国際天文学連合はさらに以下のように決議する:
冥王星は上記の定義によって dwarf planet であり、trans-Neptunian object天体の新しい種族の典型例と認められる。
・・・・
冥王星・セレス・2003UB313dwarf planetですが、dwarf planetは惑星ではありません。dwarf planetは今後の観測によって増える可能性がありますが、惑星が増える可能性は低いでしょう。
dwarf planetやsmall solar system bodies、trans-Neptunian objectをどのような日本語に訳すのかは、日本学術会議や関係学会などで慎重に検討することになります。

日本惑星科学会『「惑星の定義」が意味するもの』から。

国際天文学連合 (IAU) 総会で最終的に決まった惑星の定義は
太陽を周回する天体で、
自己重力が固体強度を上まわって球形になり、
(合体または重力散乱で)自分の軌道の周囲から他の天体をきれいになくしてしまったもの。
ですが、当初はシンプルな(1)+(2)で考えようという案が提出されました。できるだけ基本的な条件だけ課すというのも、ひとつの考え方です。その場合は冥王星、セレス(最大の小惑星), 2003UB313なども該当することになります。また、母惑星の1/8もの質量を持つカロンを衛星でなく双子の惑星とみなすならば、カロンも(1)+(2)に該当することになります。
しかし、最近では次々と大型のTNOsが発見されているので、(1)+(2)という案では,今後その条件を満たすかどうか微妙な天体が多数発見されて、かえって混乱する恐れが懸念されます。
さらに、それらの天体と他の太陽系惑星の間の大きな質量差や軌道の違い、そしてそれらのことが形成過程の違いを反映している可能性を考慮して、冥王星、セレス、2003UB313といった天体と他の太陽系惑星はわけて考えるのが妥当ではないかという意見がでてきたわけです。
その結果、(3)の条件も付加され、(3)に該当しない冥王星は太陽系惑星のカテゴリーから、はずれることになったのです。
・・・・
新たに採択された解釈は、冥王星を「太陽系最小の惑星」ではなく「多数の小天体群(TNOs)を率いるリーダー」とみなそうというものです。TNOsはこれからどんどん新しい仲間が発見されていくでしょう。冥王星はそのリーダーなのです。
・・・・
今回の議論は、太陽系「内」においての惑星の合理的定義を考えたものでした。実は太陽系の「外」、他の恒星も惑星系をもっていることが、この10年で明らかになってきました。1995年以来、200個もの太陽系外の惑星が発見されており、それらは実に多様な姿をしていることがわかってきました。たとえば、冥王星やセレスなどよりもはるかに歪んだ軌道を持つ巨大惑星も多数発見されています。

大辞泉では、「惑星」は、

太陽の周囲を公転し、みずからは発光しない、比較的大きな天体。

「天体」は、

太陽・恒星・惑星・衛星・彗星(すいせい)・星団・星雲など、宇宙に存在する物体の総称。

Wikipedia冥王星の扱い」から。

冥王星は、「自分の軌道周囲から他の天体を一掃している」とは判断されなかったため、惑星とは見なされず、矮惑星であるとして、これに類されることとなった。決議6Aで、冥王星矮惑星の重要な典型例であると明示されている。

Wikipedia小惑星」から。

小惑星(しょうわくせい)またはアステロイド(asteroid)は、太陽の周りを公転する惑星よりも小さな天体のうち、星像に拡散成分がないものの総称(拡散成分があるものは彗星と呼ばれる)。

「天体」は、「宇宙に存在する物体の総称」ではなく、「宇宙に存在する物体、またはその総称」であり、「惑星」は「太陽の周囲を公転する比較的大きな天体」ではなく、「恒星の周囲を公転する比較的大きな天体」だったんだ。
「asteroid」の訳語が「小惑星」で、「small celestial body」の訳語が「小天体」。という訳で「dwarf planet」は、「小惑星」とも「小天体」とも言えない。そこで、「矮惑星矮小惑星)」と訳語ができた?が、Wikipediaの「矮惑星」には、

現在、日本学術会議・日本天文学会・日本惑星科学会ほかで妥当な和名が検討されている。非公式には、準惑星・亜惑星・中惑星などが提案されている。

とある。矮小惑星小惑星ということ。矮小>小という関係はなかったはず。
読売新聞「冥王星は格下げ・惑星は8個、国際天文学連合が採択」から。

惑星への昇格候補とされていた火星と木星の間にある小惑星「セレス(ケレス)」、冥王星よりさらに大きな軌道を描く「第10惑星(2003UB313)」は、冥王星とともに、新たに設定された「矮小惑星」という分類に入れられることになった。

朝日新聞「発見国」の米国に悲嘆の声 冥王星「降格」』から。

冥王星は惑星でなく、もっと小さな矮(わい)惑星だと位置づけられた。IAUの惑星定義委員会で座長を務めたハーバード大のオーウェン・ギンガリッチ教授(天文学、科学史)は、同紙上で「われわれはいま、矮惑星は惑星ではないという不合理さと直面している。小さい人は人ではないのか」と疑問を投げかけた。

読売新聞『ディズニー「7人のこびと」、冥王星降格に不満の声明

国際天文学連合によって冥王星が惑星から矮小(わいしょう)(ドワーフ)惑星に降格されたことを受けて、「白雪姫と7人のこびと」のキャラクターの「こびと(ドワーフ)」たちが24日、声明を出し、「ミッキーマウス」の忠犬、プルート(冥王(めいおう)星の意)を自分たちの仲間に迎え入れる用意がある、と発表した。

朝日新聞冥王星外し、米惑星科学者団体が「改善」求める声明発表

冥王星を太陽系の惑星から外した国際天文学連合(IAU)の定義について、米天文学会の惑星科学部会は「将来的に改善が熱望されている」とする声明(8月30日付)を発表した。冥王星の「発見国」の米国では、著名天文学者らが定義を拒否する署名をインターネット上で集めるなど、新定義への反発が表面化している。