from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

預言者ムハンマドの風刺漫画(7)

萬晩報「ムハンマド風刺漫画をめぐる紛争」から。

今私たちは20世紀後半とは異なった国際社会に住んでいる。ひところ日本で「ボーダーレス」というコトバがよくつかわれた。確かにその通りで、外国で暮らしているのに自分の国を離れて外国に来ているという意識が希薄なボーダーレス人間が増えつつある。今回、デンマーク国内法を尊重してそれにもとづいて訴訟するのではなく、イスラム諸国に使節団を派遣して紛争をグローバル化したデンマークイスラム過激派はボーダーレス人間である。
このようなボーダーレス人間が増大したのは、前世紀の終わり頃から衛星放送やインターネットなどが発達したからで、ちなみに、現在ヨーロッパから市内通話とあまり変わらない料金で遠い故国と電話ができる。こうして人々の意識のなかで国境線がどんどん細いものになり、遠くの国も近くなる。このようなボーダーレス現象を「地球市民」の誕生として歓迎する人もいる。
デンマークの新聞にどんな風刺漫画が掲載されているかなど、昔は、カシミールに住むパキスタン人にとってどうでもいいことであった。そうであったのは、デンマーク人が遠くの国に住み、よく知らない存在であると思っていたからである。だから知らないことを知ろうとする人もいた。ところが、今や遠い国もボーダーレス現象で近い国のように錯覚されて、その結果イスラム教徒でもないデンマーク人がムハンマドの漫画をかいたことで怒り、抗議デモにでかけて人死にまで出る。これは残念なことである。