from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

性善説に基づいたビジネス「莫 邦富の中国ビジネス指南 現地幹部を信頼し全権限を任せすぎてしまう危険」

Aという長野県に本社を構える機械製造会社がある。コスト削減のため、上海に機械設計会社Bをつくった。A社で働いていて信頼もでき、日本語もできる中国人にB社の経営を任せた。ところが、その中国人幹部がCという機械製造会社を密かに現地で設立し、自分の肉親を経営者にした。日本の親会社であるA社には、C社のことを技術力のある下請け先として報告して認知させ、それからはB社の設計した図面をC社に渡し、その製造を依頼する流れを作った。

いうまでもなく、この流れの中で、B社は本来より高い発注価格で仕事をC社に頼む。そればかりでなく、C社の諸経費などもできるだけB社に持たせるようにしていた。その結果、B社はなかなか利益が出なくなり、いつも親会社のA社に資金援助の追加を求めた。

A社に経営内容を疑われないよう、経理帳簿は上手に小細工されていた。その一方で、A社社長が中国視察に来たときは、立派なホテルや美味しいレストランを手配し、社長好みのメニューなどを用意させ、夜の娯楽もきちんと考えている。上機嫌になった社長は、B社がなぜ利益を出せなかったのかを結局追及せず現状を黙認した。それをよしと思ったB社幹部は、ますます暴走した。郊外に大きな工場を作り、B社もC社もそこに引っ越しさせた。結局、C社の家賃をもB社がもつようになったが、親会社のA社は依然その事情を把握していなかった。
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制度による会社経営を求めずに、個人のその場その場の感情や感覚でやっている日系中小企業がかなりある。性善説に基づいて、他人と付き合うこと自体は、私も立派だと思う。しかし、会社の制度や規則の制定と実施においては、性悪説が基本である。信頼できる立派な人でも、厳密な制度や規則がなければ、思わぬ方向に堕落してしまう恐れがある。A社の教訓から私たちは多くのことを学び取るべきだと思う。