from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

アメリカ発の世界不況

田中宇:アメリカ発の世界不況が起きる」。

雇用が増えない一方で、消費は増えている。アメリカはアジアなど世界からさかんに商品を輸入し、貿易赤字はどんどん増えている。経営者だけでなく、一般国民が幅広く消費を拡大している。賃金が増えないのに、なぜ消費を増やせるのか。
その答えが「不動産価格の上昇」である。不況を脱するため、中央銀行(連銀)は金利を非常に低い水準まで下げた。その結果、ローンが借りやすくなって住宅の需要が増え、株式市場の下落で行き場を失っていた資金が不動産市場に流れ込み、さらに需要を押し上げた。住宅を買った人々は家具なども新調し、ローンの利払いが減った人々も生活に余裕ができて消費を増やした。住宅の価格は上がり、自宅を担保に入れて金を借り、車を買ったりする人も増えた。
アメリカでは製造業が壊滅状態で、00年からの5年間で製造業の雇用は17%減少した。だが同時期に不動産業に勤める人(宅建協会加盟者)は58%増えている。住宅産業がアメリカ経済全体に占める割合は、2000年までの4%前後から、今では6%まで拡大している。
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90年代の日本の不動産バブル崩壊と、今起きかけているアメリカの不動産バブル崩壊の重大さの違いは、世界への波及である。日本のバブル崩壊は、日本人を困らせただけだが、アメリカのバブル崩壊は、世界中の人々を困らせる。
アメリカでは、不動産の前には株式市場が好調で、1990年代には、人々は株を売買した儲けで消費を拡大していた。それを考えると、不動産の後に、何か別の新しい信用創造メカニズム(与信枠を拡大する仕掛け)が発案され、まだ米国民が消費できる状況が続くかもしれない。しかし、そのメカニズムはまだ見えていない。
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アメリカで消費の勢いが減退し、日本や中国がアメリカに輸出できなくなると、日中の中央銀行が為替を維持するために米国債を買いまくる必要もなくなる。国債を買ってもらえなくなると、アメリカの長期金利が上がり、この要素も米経済の足を引っ張る。輸出国がドルを保有しなくなると、ドルの為替も下落する。
ドルが安くなると、アメリカの製造業が輸出を復活し、米経済は再生するという見方もあるが、これは間違いである。確かに、円とマルクを政治的に上げてドル安にした1985年のプラザ合意以後は、まだアメリカの製造業が強かったので、米経済は復活した。当時、たとえば自動車産業3社の中では、クライスラーは潰れかけていたが、他の2社は健全だった。ところが今は、GMとフォードという残りの2社も、潰れかけている。
アメリカが誇っていた軍事や原子力でさえ、ボーイングは不振だし、ウェスティングハウス東芝に買収されようとしている。ITの情報産業も、発祥地のアメリカから、プログラマを安く雇えるインドや東欧など世界中に移転している。もはやアメリカの製造業は全体として壊滅状態で、今後復活できたとしても非常に長い時間がかかる。為替がドル安になっても、アメリカは世界に売れる製品を作れなくなっているので、輸出はあまり増えそうもない。