from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

「小さな政府論」の理想とFEMA

ほぼ日刊イトイ新聞-翻訳前のアメリカ」から。

非常事態に備えるためのお役所、連邦緊急事態管理局(FEMA)の長官マイク・ブラウンの無能ぶりが、民主党・共和党の党派に関係なく槍玉にあがっています。
ニュースのインタビューで「コンベンションセンターの避難民には食べ物がいっていますよ」と嘘をついてあわてて訂正したり、「治安の悪化については報告を受けていません」と平気で言い切ったりするという、想像を絶する無能ぶり。この人一応弁護士なのですが、コロラド州にある国際アラブ種馬協会(IAHA)の委員を11年間もやっていました。
馬の品評会で審査員がずるしないように監視したりするのが仕事。実はそんな馬の品評会の監視も満足にできず、退職勧告を受けてやめざるを得なかったという人らしいです。馬の品評会の審査員くずれがなぜFEMAの長官なんていう要職に付くことができたかというと、一言でいえばコネです。
馬の審査員を辞めた後、2001年に彼はFEMAの理事になりました。ブッシュ大統領テキサス州知事時代からの側近で、2000年大統領選挙の全国選挙対策委員長ジョセフ・オルボーが2001年に報奨人事でFEMAの局長に就任したときに仲間に入れてもらったのです。ブラウンとオルボーは大学のルームメイト。学生時代から共和党の政治活動をしていたといわれます。
つまり何がおきたかというと、2003年にオルボーを引き継いだブラウンはオルボーのそのまたおまけ。2001年のオルボーFEMA長官は、ブッシュの2000年選挙対策委員長をなしとげたたんなるご褒美でした。ハリケーンや竜巻といった案件を扱う政府機関の長官にオルボー、ましてやブラウンといった素人をあてるという人事に異を唱えなかったのは、結局のところアメリカのジャーナリズムでありアメリカ国民自身です。

ブッシュさんは、「何が間違っていたのか知りたい」と言ったというが、間違っていたのは自分じゃないのか。
JMM911からカトリーナへ」から。

集中砲火を浴びているのが、FEMA(緊急事態支援庁)という連邦組織です。ハリケーンの上陸直後から、ルイジアナに入って対策を指揮していたのが、このFEMAのマイケル・ブラウン長官でしたが、初動の遅れから始まって、市、州、連邦のコーディネーションがうまく行かずに、特にニューオーリンズでの被災者の救援活動が停滞した、その当面の責任がブラウン長官にあるというムードが強くなって行きました。
この「ブラウン批判」は被災3日目に、ニューオーリンズスーパードームや、コンベンションセンターに避難した2万人と言われる被災者が水と食料の欠乏に苦しんだあたりから始まり、二度のブッシュ大統領被災地訪問でも止みませんでした。そして、決定的になったのは今週半ばのヒラリー・クリントン上院議員の発言です。
それは「私が夫と共にホワイトハウスにいた8年間、FEMAは閣僚級の長官を擁した立派な連邦組織でした。それを、911以降の風潮の中で国土保安庁の傘下において権限を縮小したばかりか、大幅な予算カットと人員削減がされたのです」という批判でした。
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NYタイムスの解説によると、ヒラリーが批判したブッシュ政権によるFEMAのリストラは真実で、しかも共和党は政権奪取に際して、クリントン時代のFEMAを「大きな政府論による浪費の牙城」だとして、自分たちの「小さな政府論」の理想を推し進めるためにバッサリやったのだそうです。
ヒラリーに言わせると「90年代にはハリケーンを始め、様々な天災に対する救援活動の専門家が長官、副長官クラスにいたのに、全部解雇されて何も知らない素人ばかりになった」というのですが、その素人呼ばわりされたブラウン長官は、先週の時点で「FEMAの役割は直接の救援ではありません。市と州と州兵と軍が連携を取るためのコーディネーションが任務なのです」と言って、専門家がいないことは問題ではないし、自分たちは直接の活動はしないのが正当だと述べていました。