from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

人災としての「カタリーナ」被害

JMM「天災と人災」(冷泉彰彦さん)から。

ニューオーリンズは、昨年のハリケーン「イヴァン(カテゴリ4)」の際に全市避難を発動したことがあります。その際には、本来はカテゴリ5のハリケーンにも耐えられるような堤防と、防潮体制を作るべきなのだができていない、ということが議論されています。ですが、結果的にイヴァンはコースを外れて、全市避難(この時も本当に全員の避難がされたのではないと思います)は、言ってみればムダに終わりました。今回の全市避難には、昨年の事件による「狼少年」効果があったのかもしれません。
また上陸当日の報道にも問題がありました。「カタリーナ」が上陸間際に若干勢力が弱まったこと、そして中心の通過がニューオーリンズの町よりは僅かに東となり、中心の東側という最も暴風雨の激しい部分が外れたことから「最悪の事態は回避された」という報道がされたのです。実際は、暴風雨が静まってから堤防の決壊が起こり、静かな形ですが「最悪の事態」は現実のものとなりました。
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ブッシュ大統領は、テキサス州の牧場での夏休みを切り上げて急遽ホワイトハウスに戻り、災害への対応を指揮し始めたというのですが、その第一声の中で「外国の支援は受けない」と明言し、またこの災害を克服した後には「強いアメリカが必ず復活する」と胸を張りました。
その前に、ブッシュ大統領は、テキサスからワシントンへ向かう専用機「エアフォース・ワン」の飛行経路を迂回させて、ニューオーリンズ上空を飛行、窓越しに水没した町を見たというのですが、このホワイトハウス入りの遅れも含めて、連邦政府の対応の遅さが問題になりました。
NYタイムスはこのブッシュ演説を「最悪のスピーチ」と非難していますが、それは対応が遅いだけということではありません。現状を把握できていないのに、各州からの州兵を史上最大の三万人送るとか、食事を何百万食用意するとか、部分部分の数字は具体的なのです。つまり、本質を外し、タイミングを外しているということです。
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2日夕方には、ライス国務長官が記者会見をして国連をはじめ、各国からの援助に関して丁重に礼を述べていました。ブッシュ発言とは全く逆で、「アメリカは自分だけで生きてはいけないことを国際社会が教えてくれた」という立派なスピーチでした。
その中でもライス長官はスリランカからの援助申し出について「非常に感激した」と繰り返し述べています。「津波被害からまだ復興中なのに、アメリカの被災に対して援助を申し出てくれた」ことに最大限の感謝をしていました。残念ながら日本への謝辞はありませんでした。それは50万ドルという日本政府の金額が問題なのではありません。金額の多寡でなく、そこに何のメッセージ性もないからなのです。