from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

フランスの移民労働者

MouRa 萱野稔人交差する領域〜<政事>の思考〜 第4回 国家・国境・領土2」から。

1970年にサルトルはこう言った。「不法入国とは茶番である。実のところ、それは移民政策である」と(『植民地の問題』鈴木道彦他訳)。
当時フランスには、アフリカの旧植民地からたくさんの移民労働者が不法入国していた。しかしサルトルは、その「不法入国」がじつはフランス当局によってある程度計画されたものだという。事実、不法入国の多くは警察の協力のもとでおこなわれていた。
なぜフランス当局は移民労働者を「あえて」不法に入国させるのだろうか。それはかれらをフランス社会で〈法の外〉においておくほうが管理しやすいからである。不法就労であれば、移民労働者を法定賃金よりも安く働かせることができるし、いつでもクビにすることだってできる。また、なにか問題が起これば、「不法滞在」を理由にかれらを強制的に国外退去させることもできるだろう。こうしてフランスは、植民地を放棄したあとも、〈植民地化されたままの〉安い労働力を国内に確保することができたのである。
だから国境をめぐって、グローバリゼーションにはふたつの側面があると考えなくてはならない。つまり、ひとつは、国境を越えて領土主権を空洞化するような仕組みがつくられていくという側面であり、もうひとつは、国境によって労働力の国際的な統制がなされていくという側面だ。

中国では、国内に国境のような境を設けて、労働力の統制が行われ、グローバリゼーションにフィットさせている。アメリカでは、メキシコからの不法入国者の流入を都合のいいようにコントロールしているようだから、フランスに限っての話ではない。