from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

セーフティーネットより規制緩和、失業より雇用

毎日新聞縦並び社会・格差の源流に迫る:ブレーキなき規制緩和」から。

03年12月16日、前身の総合規制改革会議。労災保険の民間開放をめぐり、委員の清家篤・慶応大教授が反対を唱えた。「セーフティーネットを弱体化させかねない」
民間に委ねて労働者への補償が不十分になった海外のケースを列挙し、会議の答申案から削除するよう求めた。
多数を占める賛成派の委員が反論した。「当会議はメンバーが一致団結していく伝統がある」
小泉純一郎首相に提出された第3次答申には「労災保険の民間開放」が盛り込まれた。清家委員は次期会議に切り替わる際、委員に選ばれていない。国鉄民営化にもかかわった議長代理の鈴木良男・旭リサーチセンター会長は言う。「われわれの思った通りじゃない人の席は消えていく」
翌04年秋、今の会議の教育・研究作業部会の委員に内定していた飲食店チェーン「ワタミ」の渡辺美樹社長が「解任」された。学校経営の規制緩和による株式会社の参入について「株式会社は利益の株主還元を優先するため不適当」と持論を変えなかったためだった。
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96年に規制緩和小委員会の座長に就任して以来、10年間にわたり規制改革を提言する機関のトップを務めるオリックス宮内義彦会長(70)に、最近の格差論議をどう見ているか聞いた。
−−規制緩和の進展が格差拡大を助長しているという議論がある。
「格差とは所得再配分の問題だ。税制や社会保障を通した格差是正のために政治は存在する。生産(経済)の方の問題ではない」
−−失業すると正社員になれず、派遣社員になるしかない現状がある。
規制緩和の前後でどっちが失業率が高いと思うか。パートタイマーと無職のどちらがいいか、ということ」
−−規制緩和の進んだタクシー業界は、労働条件の切り下げ競争になっている。
「安全基準、労働条件をきちっと守る前提でなければ競争してもらっては困る。確かに運転手の収入が減ったというクレームはある。同時に利用者にとっては台数が増えて便利になり、新しい雇用も生んでいる」
−−著書で日米の間に社会の望ましい地点があると言っている。
「生産は市場経済のメカニズムを使う米国型でやるが、分配をどうするかは日本人のコンセンサスを得ることが必要だ。ただ公共投資ばかりやっていては日本は沈む。やはり(米国に近づくために)太平洋に船出しなければならない」
−−日本型の分配システムの問題は。
「格差をなくしたために社会に活力がなくなった。私は長い間社長をやったが、びっくりするような給料を取ったことはない」
−−事後チェックルールは整っているか。
「そこは各官庁の腕の見せ所。人手とお金がかかるものだという認識が必要だ。現在は移行期で嵐の中にいる。この程度で我慢できずに放り投げるようでは、日本経済はうまくいかないだろう」