from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

ロンドン同時テロ

田中宇:ロンドンテロ:国際協調派のための911」から。

911後のアメリカが採った「アルカイダに味方するものは、すべてアルカイダとみなす」「アメリカに対抗しようとする勢力は、すべて先制的に潰す」といった方針は、アメリカの敵をどんどん増やすことにつながり、最後には重要な同盟国だった西欧(独仏)までを敵に回す結果となった。
世界に敵対と分裂をまき散らした911後のアメリカに比べると、今回のロンドンの同時多発テロに対するブレア政権のコメントは、逆方向だ。「すべての宗教のロンドン市民が標的にされた」「イギリスだけでなく、すべての国がテロの標的になりうるという点で、世界に対する挑戦だ」といった感じで、むしろこのテロをきっかけに、世界が結束してテロ対策に当たろうと呼びかける「国際協調派」の方向性を持つものになっている。
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日本の上層部は戦後一貫して、アメリカを中心とした冷戦型の協調主義体制が持続することを望んできた。小泉さんの靖国神社訪問も、中国や韓国との対立も、日米英は中露と対立する、という冷戦型の枠組みがあればこそ、戦略として生きてくる。
イギリスが多極主義的な世界体制を誘導し、アメリカもそれを黙認し、米英連合、独仏連合、中露印連合、という大国諸連合が世界の枠組みになると、日本は入るところがなくなり、孤立してしまう。

「政府開発援助(ODA)を今後5年間で累計100億ドル増額する方針を打ち出し、常任理事国入りをアピール」(毎日新聞)しただけの小泉さんは、サミットで何を感じただろうか。
JMM冷泉彰彦さんの「テロの連鎖」from 911/USA」から。

G8諸国とイスラム圏の関係が、不自然なほど資源貿易に特化していること、資源の輸出による収入は不労所得であるし、産油国国内の既得権層とそうでない層の貧富格差の元凶となること、そこに問題の本質があるように思います。石油を通じた西側諸国とイスラム圏の関係性の中に、イスラムのある種の人々の誇りを決定的に傷つける何かがあるように思うのです。何よりも産油国国内での公正な富の分配、そして資源という不労所得に頼らない産業振興などを通じて、オイルマネーに腐敗した産油国の国内事情を健全化すること、そうした長期的な対策が必要なのではないでしょうか。
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テロの連鎖を断ちきるためだといって、監視カメラを増やし、盗聴を必死に行ってもダメだと思います。まして、テロ支援政府を転覆するのだといって、民間人犠牲を伴う大規模作戦を行っていては、それこそテロリストに報復の口実を与えることになるだけです。
今日のある種の無力感の中から立ち上がって、イスラム圏との新たな関わり合いをG8が真剣に考えることでしか、この連鎖を断ちきることはできないのではないでしょうか。もしかすると、そんな動きが出てくるとしたら英国から(そうだとしても、勿論きれい事だけではない形になるでしょうが)となるのかもしれません。

小林恭子の英国メディア・ウォッチ」には、「BBCの朝のラジオのニュース番組「TODAY」で、ブレア英首相が、午前8時40分頃から(日本時間午後4時40分頃)インタビューされ」、

ブレア首相自身は、犯行を誰が起こしたのかに関して、現在のところは「分からない」。しかし、「アル・カイーダ系」である証拠がある、と述べている。
その少し前のコメントでは、「イスラム系」「過激派」であることを想定して話が進む。
そして、「実際に起きた問題の解決も重要だが、ルーツにある問題を解決することが重要だと思った」と述べている。
「ルーツにある問題とは?」と聞かれ、今回のテロが起きるような環境、状況を解決することだ、として、具体的には「中東問題」(パレスチナイスラエル問題)と、「社会の中で過激派が生まれるような状況」というようなことを答えている。
つまり、社会の一員として受け入れられていること、孤立化させないこと、など、英国のイスラム教徒のコミュニティーに属する若い人が過激派にならないように、という意味を示唆した。

とあった。今のところ、ブレアさんは冷静のようだ。
これに対し、産経社説

国内でもテロ対策の不断の見直し、国民を含めた訓練の強化などが必要だ。そうすることがテロに対する抑止効果を生むことにもなる。

と言い、読売社説

東京、大阪など、いくつもの大都市を抱える日本にとっても、ロンドン爆破事件は他人事ではない。明日は我が身の出来事かもしれない。
現在の警戒態勢を改めて徹底的にチェックしなければならない。安全の構築をためらうべきではない。

と言うだけ。何の解決にもならない。