from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

歴史は作り上げられた「真実」

サイードと歴史の記述 (ポストモダン・ブックス)」から。

すべての歴史はいくぶんかの捏造を含む言葉のフィクションだと見なされる。ホワイトによると、歴史とは言葉を駆使してひとつの見解を認めさせようとする修辞的な文章である。それをふまえれば、歴史の真実性は出来事についての文献証拠に内在するのでないと言えるし、歴史とは作り上げられた物語だと言うことができる。この作り上げられた「真実」はとても「リアル」であるため、「基礎」としての地位を与えられてきた。実際に、基礎づけ主義の歴史学では、客観的実在やリアリズム、真実といった、旧来の歴史家が絶対に必要と見なしているものが外在すると考える方法論が推奨されてきたのである。
しかし、過去なり現在なりを記述するにあたって問題が生じることが、ますます明らかになってきている。周知のとおり、世界/過去は多種多様な物語として立ち現れるのだが、私たちはそれらを解釈しつつも、そこから抜けだすことはできないのだ。歴史とは歴史記述以外の何ものでもなく、文化の中で知識、信念、コード、習慣という形に作り上げられたものを表象するテクストに、弁証法的に関わっていく読みを実践するマトリックスなのだと言えるかもしれない。その記述は誰かの言説に影響さえている。