from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

正しいおじさん

内田樹「おじさん」的思考』を一応読み終えた。着眼点が私にとっては割と新鮮で面白く読めたし、かなりの部分は納得させられもした。でも、ちょっと引っ掛かる部分もいくつかあった。「インテリで、リベラルで、勤勉で、公正で、温厚な『正しいおじさん』」に成り代わって、「正しいおじさん」の立場を擁護して差し上げましょうと書かれた本のようだが、内田さんは自分こそが「正しいおじさん」なんだと言いたいんじゃないのかと思われた。「自称リベラリスト」や「先進性」を唱える人にかなり嫌悪感をいだいておられるようだ。

「毎日会社にゆくのが楽しみ」であるような仕事を選ぶと楽しいよ。

と就職活動をしている人たちに言うために、「私がこれまでした仕事の中でいちばん楽しかったものの一つ」だったとして、内田さんと友達が作った翻訳会社でやっていた「英文マニュアルの切り貼り」仕事のことを例に挙げている。それは「ずっと手は動かしているのだが、頭はほとんど使わない仕事」だったという。これは何が言いたんだろう。自分は今そういう楽しい仕事は辞めて相当頭を使うがそれほど楽しくはない大学教授をやっているけど、「相当バカ」な学生達諸君は、楽しくないに決まっている大企業に就職したいなんて思わないで、頭を使わない仕事も結構面白いからやってみればと言いたいってこと?これから「大量発生する」であろう「大卒のブルーカラー」族を見放さず、なんかとしたいという気持ちはお有りのようだが、君たちは私のようなエリートにはなれっこないんだから、身分相応な道を探した方がいいよとおっしゃっているように読めてしまう。
まあ、おじさんってそういうものだから、いいんだけどね。