from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

まだ他にもある知られざる事実

『「考える人」HTMLメールマガジン403号―望郷のバラード』(河野通和)から。

「封印された原爆報告書」は深夜枠の再放送でも見ましたが、広島への原爆投下の直後から、陸軍省医務局の指揮の下、総勢1300人もの日本人医師、科学者らによる調査団が被爆実態の綿密な調査(治療ではなく原爆が人体に与える影響を「モルモット」観察のように調べる)を行っていたこと、かつその膨大な調査報告書がすべて、アメリカ国立公文書館のGHQ機密資料の中に眠っていた事実が明らかにされます。唖然とするのは、被爆者の医学的所見、死傷者のデータ、被害の生々しい報告などが、被爆者救済のために活かされるのではなく、原爆の「効果」を知りたがっていたアメリカの意向を先取りする形で、日本人自らが申し出てアメリカ側に提供されていたという事実でした。原爆がどれだけの人を殺傷できるか。17000人の子どもを対象としたデータからは、爆心地からの距離と死者の割合を示した「世界初」の実証的なグラフ「死亡率曲線」が導かれます。つまり、国の粋を集めて行なった日本の原爆調査は、被爆犠牲者を利用した外交カードとして使われ、その後のアメリカの核戦略の礎となったのです。「革命的な発見でした。原爆の驚異的な殺傷能力を確認できたのですから。アメリカにとって極めて重要な軍事情報でした。まさに日本人の協力の“賜物”です。貴重な情報を提供してくれたのですから」という日系アメリカ人研究者の証言には、言葉を失います。こうした事実の重さは、「記憶の風化」などと言って簡単にやり過ごしていいものとは思えません。おそらくまだ他にも、知られざる事実、隠蔽された真実、葬られようとしている何かがあると想像しないわけにはいきません。