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子育ての日々の断片を書き綴る

日本における新型インフルエンザ患者の致死率は、約0.002%

JMM「森兼啓太:医療に対する提言・レポート from MRIC」から。

日本における致死率はどの程度であろうか?厚労省が把握している新型インフルエンザA(H1N1)確定患者数は、7月下旬に5024名が発表されて以降、公表されていない。WHOへの報告も行なわれているのであろうが、WHOが国別の報告数を公表しなくなったので、一般には公開されない。それはさておき、8月に入り積極的に新型インフルエンザのPCRによる確定診断を行なわなくなったことを考えると、最終報告である5000人の2倍にはならないと推測される。
新型インフルエンザによる死亡者は、その死因と新型インフルエンザとの関連性に大いに疑問のある症例があるものの、現在までにおよそ20名である。報告された感染者数と1万人とすれば、死亡率は0.2%である。これは多くの国からの報告よりもやや低い値である。
実際の感染者数はどのくらいであろうか?実は日本は感染者数の推測を行なう上で大変有効なしくみをすでに持っている。約5000か所の定点医療機関から寄せられる、インフルエンザ様症状を呈した患者の数を報告するシステムである。インフルエンザ
は5類定点疾患であり、このサーベイランスは年中稼働しており、全国津々浦々の医療機関が毎週患者数を報告している。これらの医療機関の献身的な努力により、日本のインフルエンザの流行は国全体の規模が把握できるという、世界でもまれなシステ
ムとなっている。先日のWHOのミーティングでもまずこの点に賞賛の声が聞かれた。
このシステムを使用すれば、全国の患者数が推定できる。詳細は省略するが、2009年5月中旬から第37週(9月14〜20日)までのインフルエンザ累積患者数は、約85万人である。そのほとんどが新型インフルエンザの患者であることは、別の調査によって明らかにされている。
この数にもとづいた、日本における新型インフルエンザ患者の致死率は、約0.002%である。0.2%でも、0.02%でもない。桁が違う、誤植だと思われるかたは、20を100万で割ってみて頂きたい。これが日本の現状であり、一部の専門家が危機感をあおるがごとく指摘するような季節性インフルの致死率(0.05〜0.1%)と同等という状況では、決してない。
WHOのミーティングで日本の分析になった際に、筆者はこの数値を示した。WHOのスタッフは一様に驚愕し、日本はなぜそんなに致死率が低いのか、と問う。それに対して、筆者は胸を張って答えた。「国民皆保険による医療アクセスの良さと、アクセス先であるクリニックや病院の医療従事者の献身的な努力のたまものである」と。