from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

国鉄の二の舞

BPnet「大前研一氏:小泉改革の目玉「郵政民営化」のなれの果て

新BIS規制とは、簡単に説明すると、銀行にとって必要な自己資本比率を定めたものだ。銀行というものは自己資本比率が一定割合以上ないと、経営破綻する危険が高くなる。新BIS規制では、リスクのある貸出しの比率が高すぎると、業務改善命令を受けるなど、行政からの指導を受けることになっている。
これがゆうちょ銀行にとって非常に大きな制約になる。新BIS規制を厳しくすると貸出し先の債券の分類が必要になる。何といっても、郵便局がお金を貸しているのは、破綻懸念先、要注意先が多いと思われる。国の関連している事業にお金を出しているものはほとんどが破綻懸念先だった、ということになる可能性が高い。
邪推するに、民営化直前の時期になってから金融庁が試算してみたのだろう。するとこのまま民営化したら新
BIS規制の対象となる可能性が極めて高いことが分かった。そこで「新BIS規制については緩めの方針」なんてことになったわけだ。民業圧迫以前の問題として、銀行と名乗りながら、銀行に対する基準は甘くします、同じ土俵ではありません、と言っているのだ。ずいぶんとなめた真似をしてくれるものだ。
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民営化にあたって、わたしが気にしているのは、郵便局が持っていた資産だ。例えば東京駅の前に東京中央郵便局がある。まさに駅前1丁目という格別な不動産だ。民間の丸ビル(丸の内ビルディング)より地の利は高いといってもいい。こういう資産を郵便局は全国にたくさん持っている。
しかも、それらに関しては下記の例示にあるように巨大な開発計画が目白押しである。郵便局や銀行窓口が必要としているのはこうしたビルの一階部分のごく一部であろう。郵便物などの仕分けや配送作業は、当然、もっと安い土地に移してしまえばいい。家賃が坪当たり6万円も取れるようなところで集配作業をやるのは、それこそ民営化した郵便局に相応しくない。
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民営化委員会は、「それらの資産は、上場したときの価値に含まれる。上場益は国のものだから返すことになる」と言っている。だが、その論理にだまされてはいけない。そのいい例が国鉄の民営化のときにある。国鉄は駅前・駅周辺に価値の高い資産を持っていた。駅前の駐車場、空中権‥‥。汐留や品川の操車場なんて土地もあった。当時の国民は、そういうものを国鉄が持っていることを知らされずに、ただ「国鉄には巨額の借金がある」とばかり思い込まされていた。
そして、気がついてみれば、国鉄の借金は国民に押し付けられていて、国鉄が持っていた資産は、ちゃっかりとJRが持っていった。それで駅ビル、駅中、駅横、駅そば事業など、やりたい放題でJRは史上最高益、ときている。ところが、そのキャピタルゲインはごく一部しか国庫に戻ってこない。なぜなら、かなりの株式は既に国民の手を放れている。国民が「実は国鉄は、駐車場や汐留などの資産を持っている」ということを知ったのは、民営化の後のことだったからである。