from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

JMM『「ストレスへの対応能力」from 911/USAレポート』から。

何よりもこの映画に意味があるのは、とかく神格化され、また反対の立場からは日本軍の狂気などと逆の神格化がされがちな「玉砕思想」というものが、単にストレスへの対応能力の決定的な欠如に過ぎないということを暴露したことでしょう。(ややネタバレになりますが)中でも戦争後期に島嶼を放棄するような際に横行した「手榴弾自決」という歴史的事実を戦慄的な映像で描いた点が、映画としてこの『硫黄島からの手紙』を画期的なものにしているのだと思います。
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玉砕思想に象徴される、日本文化の中にあるストレスに対する対応の「下手くそさ」は今でも様々に形を変えて残っています。利害の錯綜する渦中にあって自殺者の絶えない問題、善悪のレッテルを安易に貼ってしまう問題、社会の「空気」に過剰に反応して極端な行動を一律に取ってしまう問題、などどれも「ストレス対応への下手さ」という問題としてとらえることができるのでしょう。
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ある種の日本人はどうしてストレスに耐えられないのでしょう。それは自信が欠落しているからです。自信の背景にあるべき十分な自尊感情を持てないでいるからです。それゆえに、大きなプレッシャーを抱え込んでしまうと、冷静な対応ができなくなってしまうのです。本論の主旨とはやや離れますが、意識的な愛国心の鼓吹が問題なのもこの構図に似ています。愛国心論議の最大の問題は、その背景に「自国への自信のなさ」が見え隠れすることであり、その愛国心がどうして暴走するのかというと「どうせ自分たちは遅れているから何をやっても良いんだ」という勘違いを生むからでしょう。