from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

お金を使わない国民としっかり儲ける銀行と大嘘な政府

nikkeibp.co.jp「大前研一:格差社会・日本を数字で裏付ける

先月24日に発表された日本銀行の統計によると、2005年の個人金融資産の残高が、初めて1500兆円を突破し、1508兆円に達したことが分かった。2004年末の1433兆円と較べて約75兆円増。率でいえば実に前年比5.2パーセントもの伸びである。いうまでもなくこれは1979年の調査開始以来、最高額である。
・・・・
1508兆円の多くを占めているのが定期性預金450兆円という事実である。定期性預金とはいわゆる定期預金や定額預金のことだが、これだけで全体の約1/3に達しているのだ。次に保険・年金準備預金が390兆円。この2つで総額の半分を越えてしまうのだ。ところがこの定期性預金、2000年を境に減少傾向にある。一瞬「あれ?」と思ってしまうのだが、実はここで見逃してはならないことがある。それが「流動性預金」の伸びである。
流動性預金とは、いわゆる普通預金や当座預金のことだ。つまり、定期性預金に比べて金利が安い商品である(といって、定期性預金の金利が高いとは断じていえないわけだが…)。要するに銀行は、ペイオフのリスクを口実に、金利を払わなくてはならない定期性預金を減らして、金利を(事実上)払わなくてよい流動性預金を増やす、というずるいことをしているだけだ、ということがここでわかるのである。銀行が流動性危機から脱したのなら、元本保証の流動性預金も廃止するか、「余り意味がありませんので定期預金に戻して結構です」と一言あってしかるべきだ。
・・・・
われわれ日本国民は、間接的にではあれ国債を買っているのである。よりによって一番リスクの高い金融商品を、だ。私は、日本国政府が発行する国債など人口減の将来世代に支払わせるという意味で、国家的には禍根を残すものである、という認識を持っている。だから国民が定期性預金、流動性資金、あるいは定額預金に資産を投入しているのは、いってみれば国家の犯罪に手を貸しているのと同じことだとすら思う。
・・・・
どの層で見ても、やはりこの5年間でともに資産額は減っている。今までの例と同じで、不動産価格の低下がなせるワザだ。そして、これまた先ほどの例と同じく、その減りには格差がある。そしてその格差はこの5年間で一層開いているのだ。最低収入層と最高収入層の間で、1994年には3.05倍だった格差が、2004年には3.35倍にまで開いているのだ。この5年で収入の低い層ほど一層資産が減り、最高収入層との格差が広がっているのである。明らかな格差社会である。
日本の格差社会化が、他ならぬ政府関連機関の統計によってはっきりと示されているのである。にもかかわらず、政府高官は「差なんかついていない」などという。大嘘もいいところだ。数字を見れば明らかである。格差はついている。個人金融資産の残高が過去最高の1508兆円に達する中、日本の格差社会は着々と進んでいるのである。