from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

恐ろしく無知なのである

魚住取材ノート「メディアの影」から。

朝日新聞の月刊誌『一冊の本』の3月号にすごい記事が載っていた。
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ライブドア 株売却益/特別利益に計上/純利益黒字装う/粉飾70億円か」
これは企業買収に伴う株売却益を、本来、計上すべきではない特別利益に計上したことを大いに問題視した記事で、「特別利益の計上によって本来は赤字になるはずの純利益を黒字にした」という内容が書かれている。
でも、と大鹿記者は言う。株式の売却益を特別利益に計上するのはしごく当たり前の会計処理で、経済記者の一年生ならば誰でも知っている。もし、記事の通りライブドアが株式の売却益を特別利益に計上していたとしたら、一般的な会計処理をしていたことになるという。特捜部の事情聴取を受けているライブドア幹部は悔しそうにこう言ったそうだ。
「何で子会社株の売却益を特別利益に計上しちゃいけないんですか! 毎日新聞さん」
大鹿記者は他紙の例も挙げて「企業会計のイロハが分かっていない」「おどろおどろしい」だけのライブドア報道を痛烈に批判し、特捜部の捜査についてもこう語っている。
特捜部が、わざわざ東証を全面ストップに追い込んでまで、証券取引法の『風説の流布』を問うのは大げさすぎるように思える。粉飾のレベルも大したものではない。企業会計に詳しい大学教授は『本来は証券取引等監視委員会の対応で十分に済むマター。粉飾の度合いと、社会的制裁の度合いの落差が、あまりにも大きい』と指摘する。ライブドア上場廃止の見通しで、万引きで死刑宣告を受けたようなものだ」
エッ、そうだったの! だったら、新聞はなぜそのことをちゃんと書かないのかと疑問に思われる人もいるだろうが、私も含めて記者というのは、特に事件記者というのは恐ろしく無知なのである。無知であるがゆえに、検察官に「ライブドアというのはこんなにあくどいことをやってたんだぜ」とささやかれると、そのまま信じこんでしまうのだ。