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子育ての日々の断片を書き綴る

密約(2)

THE RYUKYU SHIMPO『密約「政府が口封じ」沖縄返還交渉』。

沖縄返還密約を裏付ける公文書が2000年に見つかった際、当時の河野洋平外相(現衆院議長)が沖縄返還当時の外務省アメリカ局長だった吉野文六氏に対し、密約存在の「否定を了解してくれ」と要請していた問題で、密約の存在を報道した元毎日新聞記者の西山太吉氏ら関係者は「政府の口封じ」「政府の犯罪だ」と厳しく批判した。
密約を報道し、国家公務員法違反容疑で逮捕された西山氏は「はっきり言って口封じだ。政府の一連の答弁の根拠が崩れた」と指摘し「吉野氏が認めたことで決定的に政府を追い込んだ。これからの政府の否定は、国民に対してうそをついていることになる」と政府を厳しく非難。「外務省のメンツと官僚的体質が原因。それを許してきた国民の政治的、外交的無関心とメディアの関心のなさも外務省を増長させた」と述べた。
 沖縄返還に関する米公文書を入手し、日本政府の裏負担の実態を明らかにした我部政明琉球大学教授は「日本政府は組織的に密約があったことを知っているだろう。自分たちの記録はなくすことができるが、相手がある場合は記録が残る」と指摘。「(今回の件だけでなく)日本外交の今までの記録そのものを公開する必要がある。実際に公開されることを念頭に外交をすれば、密約など生まれなくなる。現在と同じようにならないような体制に変えていくべきだ」と強調した。
仲宗根悟・元祖国復帰協議会事務局長は「公文書によって明らかになったことを、なかったとしている。これこそ政府の犯罪。県民もこのことを知るべきだ」と訴えた。
密約問題に詳しい金城睦弁護士は「状況証拠が出そろい、客観的に密約があったと考えられるのに政府は否定する。これでは大本営発表と同じだ」と厳しい口調で批判。「『都合の悪いことは否定してしまえ』という体質は、民主主義として日本がまだ成熟していない証拠」とし「政府は密約の存在を認めるべきだ」と要求した。
沖縄人権協会の福地曠昭理事長は「日本が肩代わりした400万ドルが、現在の思いやり予算につながっている」と述べ、金銭面でアメリカとの問題を解決しようとする政府の姿勢を非難した。

沖縄タイムス(2005年12月14日)「沖縄返還密約訴訟きょう第3回弁論/意義語る楢崎弥之助さん」から。

文書を入手したのは、楢崎さんが精鋭を選び抜いたという社会党・軍事プロジェクトチームの横路孝弘議員。七一年の委員会では文書の存在を伏せて質問に立ったが、政府は完全否定したため、翌年の予算委で文書の番号や日付を特定して追及した。
「その夜、プロジェクトチームでは文書を出すか出さないかで大激論になった。(情報源を守らなければならない)横路君の立場もあったが、国民に問題を明らかにするべきだと説得した。複数の人物を介して手に入れていたから、信義則違反はないと考えた」
翌日、楢崎さんはチームを代表し、衆議院本館三階の小部屋で福田赳夫外相、井川克一条約局長、吉野文六アメリカ局長と会談。文書を突き合わせて、手に入れた公電が本物であることを確認し合った。
「あの時のことは今でも鮮明に覚えている。同時に出し合うことに執拗にこだわったのは吉野局長だった。『じゃあ始めるか』と互いに立ち上がり、互いに背広の内ポケットから出し合った」
外務省高官のサインまで一致し、福田外相は腕組みをしたまま「しょうがないな」とつぶやいたまま黙っていたという。
政府は文書の流出を問題化し、密約問題は漏えい問題にすりかわった。
「わずか二日後だった。この種の問題が起こると本質をすぐにすりかえうやむやにする。国会答弁などを聞いていると、今はもっとひどく、小泉首相などはそれを極めている。マスコミも批判するどころかあおりたてる。野党が弱くなった。なし崩しで日米は一体化し、沖縄の基地は新たに自衛隊と米軍の基地になる。あおりをくうのは沖縄だ」

沖縄タイムス(2006年2月9日)「沖縄返還「密約」/“身内”証言、政府追い込む」から。

政府がひた隠しにしてきた沖縄返還の「密約」を、対米交渉の中枢にいた吉野文六・元アメリカ局長(87)が政府関係者として初めて認めた。一九七一年、毎日新聞記者だった西山太吉さん(74)が暴いた「密約」は、二〇〇〇年以降に相次いで見つかった米政府の公文書で再証明されたが、吉野氏の証言は、それでも密約を否定し続けた政府を“身内”が追い込む格好となった。
西山さんは、「(吉野氏の発言は)政府の密約を内部から立証したということ。分かってはいたことだが、これまでの政府高官の発言や吉野氏の裁判における証言が紛れもないうそだったということだ。政府はこれ以上、密約を否定する余地はない」と話した。
衆院議員楢崎弥之助さん(85)=福岡市=は一九七二年、密約を裏付ける極秘電信文を入手した旧社会党を代表して、衆議院の会議室で吉野氏と文書をつき合わせたその人。米公文書の発見が報じられても、密約を否定した吉野氏に「対決してもいい」と公言していた。密約を認めた吉野氏には「当然です」と息巻いた。

朝日新聞西山元記者、改めて政府批判 沖縄返還協定巡る密約問題」から。

政府は今回の証言について「全くそうした密約はなかったと報告を受けている」(安倍官房長官)と否定している。