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子育ての日々の断片を書き綴る

スピルバーグの観点

JMM『from 911/USAレポート』第231回「スピルバーグの『ミュンヘン』」から。

12月23日に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画『ミュンヘン(原題は "Munich" ミュニック)』は監督の最高傑作であるだけでなく、2005年までの現時点で言えば、今世紀のハリウッド映画の中で、最も価値のある作品ではないかと思います。
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日本では、いやアメリカでも、リベラリズムというものは、右派の人々から「自虐」とか「反アメリカ」と言って非難されることがあります。どうして非難されるのかというと、そう言われる言動の多くには「自分は国家に頼らなくても生きていける」という自覚症状なき「奢り」が見え隠れするからです。ですが、この『ミュンヘン』におけるスピルバーグは違います。ユダヤ系という自分のアイデンティティに誇りを持ち、そのユダヤの文化、イスラエルという土地への激しい愛を持つ、その愛情のゆえに高い道義を求め、隣人との和解による現実的な生存をと主張しているのです。そこには、反ユダヤや自虐の観点は絶無だと言って良いでしょう。