from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

耐震偽造(3)

nikkeibp.jp耐震強度の偽装問題は偶発的事件か、業界の構造問題か」から。

まず、「“売れるマンション”と“よいマンション”が、必ずしもイコールではない」という現実がある。
ここで私たちがいう「よいマンション」とは、一言で言えば「質実剛健な物件」を指す。
これは「構造躯体・耐久性・可変性などに重きをおいた物件」であり、「メンテナンス性に配慮された物件」であり、「管理のしやすい物件」だ。
まずデベロッパーは「売れるマンション」を造ろうとする。消費者が求めるマンション企画を志向する。それそのものは、資本主義経済社会では当然のことともいえる。
そこで、想定購入者にアンケートを行って、その傾向を探ってみたりする。
ところが、消費者である私たちは、実はマンションのことをよく理解していない。
社会問題を突き詰めていけば大概「教育の問題」に突き当たるが、私たちは、「お金をはじめとする金融全般」「不動産に関する知識」を得る機会がないまま、社会に出た。私たちが受けてきた教育は、これは言葉は悪いが「大量生産型偏差値教育」であって、社会に出ると必要な、実用的な知識を吸収する場面が与えられなかった。
だから例えば、消費者は、
「どんなマンションがいいですか?」と聞かれれば、
「うーん、そうねぇ、キッチンはイタリア製がいいかしら」
「お風呂にはミストサウナがついてるほうがいいかしら」
「デザイナーズマンションがいいわ」
など、建物の本質とは関係のない、設備仕様や内装・外観に言及する。
よって供給側は、必然的にそこに力を入れた物件を企画し、その分、それ以外のところは必然的にエネルギーやコストを注ぐことはできない。そうしなければ、ライバルの物件に負けてしまう。
・・・・
となれば、しわ寄せが来るのはどうしても消費者の関心の低い部位。そしてまさにそれが、今回問題になり、かつ建物にとって最も重要である「構造」「耐久性」であり、あるいは「可変性」「メンテナンス性」「管理のしやすさ」なのだ。
マンションデベロッパーの中にいる人たちの中でも、心ある人、志の高い人、使命感の高い人は当然、このような現状を良しとはしていない。本来売りたい物件と、実際に造っている物件はイコールではない。
資本主義経済社会におけるどのような仕事も、基本的には、「現実と理想とのせめぎあいの中で、妥協点をどこにおくか」という話だが、組織にいる一人一人の力は弱く、多くは全体の流れに流される。