from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

ひきこもり社会

論座2005年2月号「家族・会社にもう頼れない」(広井良典氏)から。

二〇〇四年の夏、ヨーロッパと中国に続けて行く機会があったが、残念なことに日本社会がいちばん「個人がバラバラになっている」という感じをもった。ヨーロッパには、自立した「個人」がまずあり、それが様々な形でコミュニケーションをとる、いわば成熟した姿がある。たとえばそれは、見知らぬ者同士のちょっとした挨拶や互いに道を譲るといった、ごく日常的な場面に現れている。一方、中国の場合は、ある意味でかつての日本のような「古い共同体」のようなものが、残っていて、人と人のあいだの距離がぐっと近い。
現在の日本は「地縁・血縁的な“古い共同体”が崩れたが、それに代わる“新しいコミュニティ”ができていない」ということに尽きる。都市化が進み、経済も豊かになって社会が「個人」単位になっていく。そうした個人をもう一度「つないで」いく何かが必要なのだが、まだできていない。これが日本社会の現状であり、閉塞感の大きな背景でもある。日本社会全体がある種の「ひきこもり」状態にある。

中国も若い人を中心に急速に「ひきこもり」社会になりつつあると思うが、旅行者には分からないんだろうなあ。