from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

「官か民か」という二分論は古い議論だ

昨日の東京新聞の『「官製市場」の裏側』から。

東洋大学大学院の修士課程に来年四月、社会人を対象とした「公民連携専攻」が誕生する。
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公民連携とは、通称PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)と呼ばれる分野。公共的なプロジェクトに民間の連携によって事業をよりよく進めるという新しい手法だ。欧米では1980年代以降、独立した分野として確立し、盛んに研究が行われてきた。PPPの手法としては、すべてを民間に委ねる民営化から、単に運営だけを民間が行う公設民営まで多種多様だ。
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開設の狙いについて、同大大学院経済学研究科委員長の中北徹教授は「『官から民へ』を掲げる小泉改革が進むが、小さな政府をつくれば、すべての問題が解決することにはならない。外交や防衛などのごく一部を除くほとんどの分野は公民が連携していくべき分野だ」と話す。
「官か民か」という二分論は、実は古い議論だとの指摘だ。
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(別の大学関係者は)「政府自体が、大きい政府か、小さい政府かの二分論の発想から抜け出さないと、公と民の相互協力はうまく機能しない」と国内での課題も指摘する。

そう言えば、同じような発想の第三セクターって一時期流行ったけど、うまくいっていないところが多いんではと思って検索してみると、『笹山登生のオピニオン08の「第三セクターから第四セクターの時代へ」』というページに、

地域振興の切り札として、もてはやされた第三セクター方式が、長引く不況と杜撰(ずさん)な経営管理とにより、各地で破綻している

とあった。ここには、PPPの紹介もあり、

地域が自律的発展をとげるためには、外から与えられる公共事業よりも、地域の内発的発展力を高めることが必要だということは、ここ数十年、いわれ続けてきたことである。
今回の沖縄振興策においても、この重要性を指摘する声も強い。
しかし、公共事業にかわるものが、なかなか成功しないというのも事実である。ダム廃止を唱えた四国のある村長さんが地域自立のために始めた第三セクターが、資金難に陥り、頓挫しかけているという例もある。
ここで、これまでの第三セクターのシステムを改め、新たなパラダイムのもとで、ボランティア、NPONGOが参画した第四セクターともいうべき概念での内発的発展力向上の方途を模索すべき時期にきているのではないだろうか。
さらにいえば、公共事業に対峙するために内発的発展力を醸成しようとするのでなく、公共事業そのものにPPP方式システムを確立することの方が、より現実的な選択であるといえる。

と。これが書かれたのは7年ほど前のようだが、今までPPPって知らなかった。知らなかったのは私だけ?
DBJ Metropolitan Topics 米国都市再生におけるRFP方式の動向と我が国への示唆」には、

我が国では、経済社会の構造転換のなかで、都市再生、地域再生が急務となっている。
これらは新しいアイディアが求められ、また、PPP(Public Private Partnership)を強化し、社会的に最適なリスク分担を実現する新たな事業の仕組みが必要である。
一方、米国では我が国に先立つ80年代以降、産業構造の転換が進み、都市再生が進められたが、これらを支えた要因のひとつが創造的で多様性あるPPPの活用であり、特に、プロジェクトの企画開発段階から民間の参加・提案を求め、事業内容を定めた募集要項を作成し、事業者を公募する「RFP方式(Request for Proposal)」が広く活用されている。
これは、構想段階から最終的に事業に責任を負う民間事業者、投資家、金融機関等の視点を反映させ、公民の役割分担を明確化し、良質なプロジェクト形成を目指すものである。

とあって、よく研究されているようなのに、なんで未だに「民営化」だとだけ言っているんだろう。
河北新報社

8.16宮城地震で、複合健康施設「スポパーク松森」(仙台市泉区)の天井が落下した事故を受け、仙台市は18日、民間資金活用による社会資本整備(PFI)事業の検証に乗り出す方針を固めた。「安全対策まで民間任せでいいのか」との批判が出ているためで、官民の役割分担など制度の課題を洗い出す。コスト縮減の切り札とされるPFIをめぐり、仙台市の対応は全国の自治体の注目を集めそうだ。
市は2003年策定のPFI活用指針で、整備費10億円以上の施設建設事業について、PFIの導入可能性の検討を義務付けた。PFIの検証は指針の策定後初めて。
事故原因は現段階で特定されていないが、市にとってスポパーク松森がPFI第1号であることなどから検証が必要と判断。指摘の多い安全対策を中心に、行政がどこまで関与すべきかなどを検証する。
PFIで整備したスポパーク松森について、仙台市は「民間のスポーツジムと同じ。安全対策も含めて事業者が責任を持ってサービスを提供すべきだ」(加藤義雄副市長)との考えを示すが、「入札や完工検査、建築確認の際に安全対策をチェックする責任がある」との指摘もある。
市議の一人は「民間がマンションを勝手に建設するのとは違う。チェックに限界があるというのも誤り」と手厳しい。
PFIは「低廉かつ良質な公共サービスが提供される」(内閣府)との触れ込みで、導入に踏み切る自治体が相次いでいる。最大の魅力は財政支出の削減効果(VFM)だ。
市が単独で事業を実施した場合と比べたVFM値は、スポパーク松森で19.5%(約6億9400万円)と試算される。税収減と補助金カットに頭を痛める自治体にとって「直営は今さらあり得ない選択」(仙台市幹部)という。一方、行政が深く関与しすぎると、せっかくの民間の経営ノウハウや技術力を生かし切れなくなるというジレンマもある。
仙台市のPFI事業担当者は「官民の役割分担で行政をスリム化する流れには逆らえないが、新しい手法のPFIとどう向き合うべきか、いまだに戸惑っているのも事実」と打ち明ける。

今もてはやされている民営化手法「PFI」も一歩間違えるとこんな結果を生むようだ。
スポパーク松森」は、ゴミ焼却施設の余熱を利用する施設で、tabaccosenさんによれば、開業前にも
ゴミ焼却施設を巡って色々問題があったようだ。