from上海to東京

子育ての日々の断片を書き綴る

金子光晴

――話さないほうがよかった。
誰しも、そう考えるだろう。話は、なにごとも相手にわからせることができなかった。
話された相手も、わかろうとして、あるいはわかったつもりで、似もつかぬ別なことをそれとおもいこんで、それで打切りとなるよりほかはなかった。
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口は、話さずにはいられないのだ。
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口からはじまる誤解と紛糾を、みすみすひきかえにしても人は、話さずに耐える苦しみから逃れたいとおもう。

と書いてある。口は災いの元であると分かりながら話し続けないと何も解決はしない。と思いながら、話さない方がよかったと思うときもある。

人間の理想ほど、無慈悲で、僭上なものはない。これほどやすやすと、犠牲をもとめるものはないし、平気で人間を見ごろしにできるものはない。
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個と個との関係は、本来、争いと妥協しかありえない。相手の手足に、いかに縄をかけ、勝手なまねを封じるかということだ。

とも書いてある。そういうもんなんだと思っている方がよさそうだ。

他人のことが目につき、重箱のすみをせせって、小さな争いがたえず、心にしまって、我慢ということができない。

口先とはうらはらで、人間は、平和に耐えきれない動物なのではないか、とさえおもわれてくる。

共感してみても何も解決はしない。